「全然違いを見せられてない」代表定着も見据え、佐野海舟が鹿島でやるべきこと。知念慶とのボランチコンビには確かな手応え
新コンビ確立に大きな一歩
早い時間の仲間の先制点が幸いし、そこからはボランチ2枚がより近い位置で連動しながらプレーできるようになった。佐野自身のボール奪取力が光る場面も増えてきた。 「知念君はどっしり構えてくれるんで、自分はもっと前に出ていきたいし、前に出ていく守備もできる。練習から良い感触はあったし、バランスは悪くないと思います」と、佐野は新コンビ確立に大きな一歩を踏み出した様子。町田でポポヴィッチ監督に師事していた佐野は、戦術理解度という部分でアドバンテージがあるのだろう。 「今年のサッカーはハッキリしているので、チームとして迷った時に立ち返ることができる」とも佐野は発言していた。確かにこの日の戦いぶりを見る限りだと、「前へ前へアグレッシブに行く」というコンセプトが両ボランチはもちろん、チーム全体に共有されてきた印象も少なくない。 チャヴリッチの2点目のシーンを見ても、後半から出場した右MF藤井智也が自身のストロングであるドリブル突破を思い切って見せ、右サイドを打開。クロスを入れたところで、仲間がDFとのデュエルに勝ってボールをキープし、安西に流している。 この時の藤井や仲間の前への選択のプレーには迷いが一切、感じられなかった。それは個々の臨機応変な判断に重きを置いていた岩政大樹前監督体制の昨季との大きな違い。ある程度の形を与えてくれる新指揮官のスタイルは、選手たちにとってはやりやすく、浸透度も速いのだろう。 佐野にしても、局面の強さやボール奪取力というストロングを出しやすい環境にあるのは事実。それを研ぎ澄ませることは十分にできるはずだ。同時に、課題の縦パスの精度を引き上げることも求められてくる。最前線に高さ・強さ・決定力を兼ね備えたチャヴリッチが陣取っているのだから、攻撃面をブラッシュアップする絶好のチャンスなのは間違いない。 「本当にあのデカさで柔らかさもあるし、何でもできる凄い選手だと思います。自分も縦の意識を持ちやすい。今はまだ全然違いを見せられてないけど、それを出さないと代表にも選ばれない。しっかりやっていきたいですね」と意気込みを示していた。 来月には柴崎も戻ってくる見通しで、そうなるとボランチの組み合わせや序列にも変化が起きるはず。名古屋戦の終盤のように樋口雄太が入るケースも考えられる。そうなった時も佐野は大黒柱として君臨し続けなければ、代表定着は難しくなる。 遠藤航(リバプール)らの高い基準を体感した男は、2024年の鹿島で確実に進化しなければならない。名古屋戦はその一端が垣間見えたと言っていいのではないか。 取材・文●元川悦子(フリーライター)