【セイコーの独立ブランド“クレドール”】誕生50周年に巨匠が手がけた名作が復活!
パテックフィリップのノーチラス、オーデマ ピゲのロイヤルオークといった著名ブランドの顔とも言えるモデルを多くデザインしてきたマエストロ、ジェラルド・ジェンタ。生前のジェンタは日本のセイコーとも良好な関係を築いていた。 【画像】クレドールの傑作、現代版ロコモティブを別アングルで見る 1970年代当時のセイコーは、クォーツ腕時計を世界で初めて発売し破竹の勢いにあったが、さらにブランド力を高めるために高級モデルのラインナップ拡充が必須という状況。そのために74年に立ち上がったブランドが“クレドール”だった。クレドールの新作デザインを依頼されたジェンタは、何度も日本に足を運び、セイコーと様々な意見を交換して、親密なパートナーシップを構築していった。
ジェンタがクレドール ロコモティブにおいて取り入れたのは六角形ケース。いままでの時計の概念を超えたアイコニックなフォルムを得意とするジェンタだが、そのモチーフは乗り物のデザインによることが多い。ロコモティブは機関車をモチーフにしているが、それには“クレドールを牽引し、未来を担うモデルになってほしい”という思いが込められていた。79年に製品化されたロコモティブを、ブランド創設50周年記念モデルとして復活させた意味は、クレドールにとっても大きい。
クレドール 50周年記念 ロコモティブ 限定モデル
ブライトチタンを素材に使った六角形ケースは、ビス留めされたベゼルがあしらわれているが、この6本のネジは長期的な使用に適した機能ネジを採用している。ケースフォルムの繊細な曲線美はジェンタの真骨頂とも言えるもので、程良いボリュームを感じさせながら、従来製品とは一線を画すモダニズムを感じさせる。リューズを4時位置に配置したバランスの良さも素晴らしい。 ブラック文字盤には繊細な放射状パターンが施されているが、これは機関車から吹き出す蒸気をイメージしたもの。ジェンタのスケッチを再解釈して作成したレンダリングに基づき、約1600本の線を1本ずつ刻むという凝った加工が施されている。 ムーヴメントはオリジナルがクォーツだったのに対し、本作ではクレドール専用の薄型自動巻きを採用している点も注目したい。ケース厚は8.9mmに抑えられているほか、ブライトチタン採用による軽量化(78g)も果たしている。総じてオリジナルのテイストを損なわずに全体の仕様を大きく向上させており、こうした復刻系モデルの理想的な形と言えるだろう。
文◎巽 英俊