『スロウトレイン』で再タッグ 星野源と野木亜紀子の“特別な関係”が生む上質なエンタメ
2025年1月2日にTBS系で放送される新春スペシャルドラマ『スロウトレイン』に星野源が出演するらしい。 【写真】星野源、松たか子、多部未華子らが共演陣が並ぶ5Sビジュアル この報を受け、早くも新年に向けて気持ちが高まっている人は非常に多いに違いない。同作は、映画『ラストマイル』が公開中の野木亜紀子によるオリジナル脚本であり、映画『罪の声』で野木とタッグを組んだ土井裕泰監督が演出を担当するものだというのだから。エンタメファン垂涎の座組である。 本作は、松たか子が主演を務め、共演に多部未華子、松坂桃李、チュ・ジョンヒョク、そして星野を迎えたホームドラマなのだという。 ざっくりとしたあらすじは次のようなもの。鎌倉で暮らす渋谷葉子(松たか子)、都子(多部未華子)、潮(松坂桃李)の姉弟は、交通事故で両親と祖母を一度に亡くしている。やがて月日が経ち、二十三回忌の法事の帰り道にいきなり都子が「韓国に行く!」と宣言。これによって渋谷姉弟は、“3人での幸せ”から“それぞれの幸せ”に向き合っていくことになる。そうして物語は日本の鎌倉から韓国の釜山へと展開していくのだ。 ここに星野はどのように絡んでくるのだろうか。『逃げるは恥だが役に立つ』(2016年/TBS系)や『MIU404』(2020年/TBS系)、さらには『罪の声』に『ラストマイル』といった野木作品に出演してきた彼が演じるのは、人気作家の百目鬼見だ。元担当編集者の葉子に執着し、執拗につきまとう面倒な作家らしく、渋谷姉弟の人生に大きく関わる人物なのだという。“執拗につきまとう”ということはおそらく、いや間違いなく、この百目鬼見も“鎌倉パート”だけでなく“釜山パート”にも登場するのだろう。本作のポジション的に、物語をかき回す役どころだ。これを星野はどのように立ち上げ、2025年の私たちを魅せてくれるのだろうか。 『逃げるは恥だが役に立つ』では大真面目で「プロの独身」を自負する地味めなサラリーマンを、『MIU404』と『ラストマイル』ではクールな刑事を、『罪の声』では“ある過去”を背負った男性を演じてきた星野。彼が参加した野木作品だけでも、その多才さに触れられるというものだ。タッグを重ねているからといって、同じようなことを繰り返したりはしない(志摩一未という同じキャラクターを演じている『MIU404』と『ラストマイル』は例外)。むしろタッグを重ねるたび、野木の脚本は星野の新たな一面を視聴者/観客の前に引き出してみせてきた。と同時に、星野は野木が描く物語をより立体的に、人間の血が通ったものにしてきた。そんな流れがあったのだから、面倒な作家・百目鬼見に期待せずにいられないのは当然のこと。おそらく、いや間違いなく、俳優・星野源が体現するまったく新しいキャラクターなのだろう。 いまや日本中の誰もが知るとおり、星野といえばマルチな才能を持つエンターテイナーだ。映画やドラマで役を演じ物語を創出するだけでなく、音楽はもちろんのこと、文筆業や話芸でも私たち大衆を魅了し続けている。私たちの日常において彼の存在はなくてはならないものであり、事実、その存在に触れない日はほとんどないのではないだろうか。だからつい勘違いしてしまうのだが、そのキャリアに対して映画やドラマの出演作は決して多いわけではないのだ。2020年代に入ってからは、数作にしか出演していない。 そんな星野がタッグを重ねていることを考えると、彼にとって脚本家・野木亜紀子は特別な作家なのだろう。いや、実際に私たちはこの脚本家と俳優の特別な関係が生み出す上質なエンターテインメント作品を、いくつも目の当たりにしてきた。2025年が楽しみである。
折田侑駿