【スペイン発コラム】久保建英が見たい! ラ・リーガ最高の1人となった“タケ”を日本代表でも
【欧州・海外サッカー ニュース】古巣バルセロナ戦でキャリアベストゲームとも言える活躍を見せた久保建英。守備では洗練されたポジショニングとハードワークでスイッチを入れ、最大の特徴である攻撃ではいつだって相手の脅威となる。そんな久保のプレーをインターナショナルウィークでも堪能したい――。スペイン紙『as』副編集長のハビ・シジェス氏が久保の凄みに迫った。 【動画】久保建英の極上プレーを総まとめ! ゴール&アシストに超絶技巧も 文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長 企画・翻訳・構成=江間慎一郎
久保建英がこのフットボール界においてどれだけの逸材なのか--そのことを説明するのに、今以上のタイミングはないかもしれない。 ラ・リーガ第13節レアル・ソシエダ対バルセロナ(1-0)は、彼がフットボーラーとして別次元の存在であることを証明する一戦となった。スペイン代表のEURO優勝の立役者ラミン・ヤマルが負傷によって招集外となった試合で、久保は彼に取って代わるように、皆の記憶に深く刻まれる衝撃的なパフォーマンスを披露している。……日本代表に招集される直前、というタイミングでだ。 日本代表を率いる森保一監督は、今のところ久保を絶対的な主力として扱っていないようだ。スペインからそんな様子を見ていると、少し悲しみを覚えてしまう。私にしてみれば、ソシエダMFは代表チームでも、いつだってレギュラーとして起用すべき選手なのだから。 私は今、久保の話がしたくてたまらない。今季序盤、この日本人はソシエダのクラブ事情も相まって困難な日々を過ごしてきたが、その後に秘められているポテンシャルを引き出し、バルセロナ戦でキャリアハイとも呼べる存在感を示した。私たちは現在、いつか姿を表すと期待した“極上のタケ・クボ”を目にしているのである。 ■守備でも輝く久保 選手の真の価値が明らかになる試合がある。久保は攻守にわたってバルセロナの選手たちを圧倒し、ソシエダを勝利に導いた。守備時に彼がバルセロナの左センターバック、イニゴ・マルティネスに対して仕掛けたプレッシングは、じつに効果的だった。攻撃の展開においてイニゴのパスを拠り所とするバルセロナは、彼が久保に押さえられたことで逃げ道としてGKイニャキ・ペーニャやサイドにボールを出すほかなく、ライン間でのプレーを封じられている。 あのような団結心と効果性にあふれたプレッシングを見せられるのは、闘志をほとばしらせ、労力を一切惜しむことのない久保のような選手だけ……それに本当であれば、彼のようなクオリティーを持つ選手に、そんな役割は求められないはずだ。 久保はそうしたプレッシングをマジョルカ、ヘタフェなど、これまでプレーしてきたチームで身につけた。そう、彼がこれまでしてきた経験は“回り道”ともされてきたが、決して無駄ではなかったのである。実際、久保はあのゴラッソを決めたセビージャ戦でも、その直前に積極的にプレッシングを仕掛け、ボールをソシエダのものとしていた。彼は攻守両面で戦力に数えられるのだ。 久保はとびっきりの個人技を有しているが、それでいてフットボールが個人のものではなく集団のスポーツであるとしっかり認識している。そうでなくてはあのような激しいプレッシングや攻守のバランスを取る動き、インサイドハーフやサイドバックのカバーリングは決して実践できるものではない。攻撃面で圧倒的な違いを生み出せる選手としては極めて珍しいことだが、彼はチーム全体を考えて、自分を犠牲にできる献身性を備えている。 ■最大の長所はやはり攻撃面 久保は守備面も素晴らしい。が、もちろん最大の長所は攻撃面にこそある。ボールを持ち運び、デュエルで相手を抜き去り、ラストパスを出し、自らもゴールを決める……彼はそうしたプレーによって、ラ・リーガ最高の選手の一人に数えられるようになった。 トランジションでボールを運ぶときには、圧倒的なスピードと体の使い方のうまさで、誰にも止められない迫力がある。その一方でポジショナルな攻撃では、強烈な緩急によって相対するDFを一瞬で抜き去る。相手が飛び込んでくればその瞬間にボールを前に出して、まばたきする間もなくお互いの体はもう入れ替わっているのだ。 久保のプレーは稲妻のように速いが、それでいて緩急やタメをつくることもできる。それはまるで、ストリートの直感的なプレーとアカデミックなプレーを融合させたかのようだ。そしてバルセロナとの一戦で、彼はそのすべての長所を丸々と、これ以上ない形で発揮している。その活躍は久保にとってもソシエダにとっても、大きな意味があった。 今夏ソシエダはロビン・ル・ノルマン、ミケル・メリーノと絶対的主力を放出。久保にもリヴァプールなどからの関心が噂された。だが新加入選手とともに再出発を図るソシエダで、この日本人は「僕がチームを引っ張りたいと思っています」と責任を背負う覚悟を示し、バルセロナ戦でその言葉をしっかりと体現したのである。 久保の選手としてのポテンシャルはまだ計り知れず、いつの日かソシエダを出て行くことは間違いない。だが彼は、「選手として崖っぷちに立っていた僕を救ってくれました」と語るクラブで、できることはすべてやろうとしているようだ。そうした強い意志と恩義を感じさせるところもまた、彼というフットボーラーを特別なものとしている。ソシエダのサポーターが彼を深く愛さない理由は、どこを探しても見当たらない。 ■私は久保のプレーが見たい! 久保はスペインと日本のフットボール史でその名を深く刻まれるべき選手だ。だからこそ森保監督は、もう少し彼に頼っていいのかもしれない。日本代表が使用する1-3-4-2-1(スペインではGKからフォーメーションを表記)において、久保を2列目に置けば間違いなく機能する。サイドに流れたり、ウィングバック(堂安律)の飛び出しを促したり、南野拓実と連係したり、逆サイドの三笘薫をフリーにするために相手選手たちを引き寄せたり、etc……。 久保は日本代表で、さらに有用な存在になれるはず。日本が強豪国と渡り合うため、長らく求め続けている確固たる地位を確立するためには、やはり彼が必要不可欠だと思うのだが……。森保監督がうまい使い方を見つけてくれることを願って止まない。 現代のフットボールは過激かつ気まぐれな意見であふれている。そうした中で、久保の芯のある成長を振り返るのは大変意義深いことだ。この日本人は、守備ではチームの規律を最大限尊重し、攻撃では磨き上げた才能で最たる違いを生み出すことができる。日本代表の未来は久保とともにあり、久保は輝かしい未来をつかまなければならない。そして私は、インターナショナルウィーク中も彼が見せるファンタジーを堪能したいと思っている。早く、バルセロナ戦の続きのプレーが見たくてたまらないのである。