日本の少子化対策では止められない、人口減少のメカニズム
◇日本の社会構造では、未婚化・晩婚化が少子化の主な要因となっている なぜ今、日本で少子化が進んでいるのでしょうか。その主な要因は、未婚化と晩婚化です。 20~30代の未婚率は上昇し、50歳時点の未婚率は、2020年で男性28.3%、女性17.8%と高い水準にあります。さらに2005 年以降は晩婚化の影響も大きく、子どもの数が0~1人の夫婦の割合が上昇し、3人以上持つ夫婦が減少しているため、出生率自体も低迷。1970年には24.2歳だった女性の平均初婚年齢も、2020年には29.4歳と、5歳以上も上昇しています。初婚どうしの夫婦がもつ最終的な子ども数も、初婚が20代の場合は2人前後ですが、30歳だと平均1.5人ほど。ライフスタイルとして子どもを持たない夫婦も増えていると考えられますが、欲しいけどできないケースもあり、ART(生殖補助医療)による出生数は全出産数の約1割弱、年間6.4万人(2021年)にまで達しています(日本産科婦人科学会「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績」)。 ではなぜ、未婚化や晩婚化が進んでいるのでしょうか。 日本の未婚率分布を見ると、とくに30歳代以降では非正規雇用の男性で高く、女性はフルタイム勤務している場合に高まるなど、非対称性が見られます。男性の場合、結婚意欲を見ても、正規雇用の人であれば7割ぐらいの人に意欲があるのに対し、非正規の人たちは顕著に低く、非正規から正規に転職すると跳ね上がる傾向にあります。やはり男性は、自分の経済力が確立されないと、結婚したいという気持ちが起こりにくいのでしょう。経済の見通しが安定していることが結婚の条件であると考えられている状況がうかがえます。 結婚に至る出会い方についても、かつて多くを占めていたお見合い結婚はほとんどなくなり、今では恋愛結婚が8~9割に達するような状況です。結婚形態の変化が初婚者数の減少に影響し、ひいては少子化の促進要因の一つとなっていると考えられます。 お見合い結婚は激減しているものの、近年はインターネットで共通項を見いだす出会いが急上昇し、初婚へのマッチングにつながりつつある 未婚者が独身でいる理由について、2021年の調査では、25~34歳では「適当な相手にまだめぐり会わないから」が最も高く、「独身の自由や気楽さを失いたくないから」、「結婚をする必要性を感じないから」といった理由が、以前に比べ増えてきています。子どもがほしい、子どもができるなどの動機が生じなければ、積極的に結婚を選択しないという状況が見受けられます。 また、海外では婚外子が多いものの、日本では98%近くが結婚しないと子どもを持たないことが調査で明らかになっています。日本以外に、韓国やトルコなどもその傾向にありますが、他国では3~7割のレンジで結婚をしなくても子どもを持つ社会になっています。日本では、結婚=パートナーと一緒に住むこと以上に、「家を継ぐ」といった歴史的なものを背負う意味や世間体を気にする文化があるから婚外子が少ないといわれています。加えて、結婚相手となる異性との出会いのなさや若年者を取り巻く経済環境によって結婚のハードルが高いことが未婚化・晩婚化を進展させています。