JR東海、静岡で豪華観光列車 ウナギ料理に込めたリニア問題解決の覚悟
JR東海と東急は5月30日の記者会見で、静岡県の観光振興と地域活性化を目的としたクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS ~ SHIZUOKA・FUJI CRUISE TRAIN~」を今秋に運行することを発表した。 【関連画像】共水うなぎを提供する浜松市の「鰻処 うな正」 横浜を出発し、静岡県内を周遊して3泊4日で横浜に戻る旅行商品として発売する。日中の移動は列車で、車内では沿線を代表する名店の料理を提供。専用バスを利用して宿泊先に向かう。宿泊は3泊とも静岡県内の名だたるホテル・旅館で、旅行代金は1人当たり75万円からという豪華観光列車だ。改めて日本のいいところを旅したいと考えている70代をターゲット層とする。 東急が傘下の伊豆急行で運用していた「アルファ・リゾート21」を改造し、2017年から運営しているTHE ROYAL EXPRESSを活用する。横浜~熱海間の運行はJR東日本が担うため、実質的には3社連携のプロジェクトと言える。 ●JR東海初となる豪華観光列車 東急のTHE ROYAL EXPRESSはこれまでにもJR四国やJR北海道への乗り入れ実績があるため、JR線への乗り入れという点では、今回の発表は真新しい話ではない。衝撃的だったのは、これまで観光列車の運行に消極的だと目されてきたJR東海が、このたび運行に参入したことだ。 JR東海以外では、JR東日本の「TRAIN SUITE 四季島」、JR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」のように、各社が自前の豪華観光列車を有している。JR九州は、クルーズトレインの「ななつ星 in 九州」を運行するのみならず、「ゆふいんの森」をはじめとする都市間特急列車についても、「D&S(デザイン&ストーリー)列車」と位置づけて、列車自体が旅の思い出になるような体験を提供している。 一方、JR東海は、自前の豪華観光列車を有していない。観光列車に限っても、10年から多客期に限って運行している急行「飯田線秘境駅号」があるくらいであり、その車両もシンプルな特急列車を利用したもので、比較的地味な存在だ。 なぜ、JR東海は他のJR各社に比して観光列車に消極的だったのだろうか。この理由について会見で、JR東海の丹羽俊介社長は「JR東海の営業路線は、東海道本線を幹として、そこから在来線が枝のような形で分かれてネットワークを形成しており、他のJR各社のように周遊型の列車を走らせるのは難しかった」と説明した。 確かに、各社のクルーズトレインのルートを見てみると、一筆書きで円を描くようなルートになっている。JR東海の場合、営業路線の構造上、同じ路線を行って戻ってくるようなルートになってしまい、「周遊」目的のクルーズトレインには不向きなようにも見える。 そうした中で、クルーズトレインを活用した地域活性化のノウハウがある東急からJR東海に、THE ROYAL EXPRESSの東海道本線乗り入れの提案があった。両社は、23年3月の東急新横浜線開業以降、連携を深めてきたという経緯がある。東急の堀江正博社長は、「傘下の伊豆急行のみならず、熱海以西のJR東海区間にもTHE ROYAL EXPRESSを展開することで、静岡県全域の地域活性化に貢献したかった」と乗り入れの狙いを述べた。