オーナー社長、痛恨のミス…「長男と次男を入社させ、後継者としての適性を見てみよう」で起こる大問題
自分が築いた会社を、わが子に継いでほしい…。そのように考えるオーナー社長は少なくありません。しかし、子どもを次の社長にするためには、注意を払わなければならない、さまざまな問題があるのです。本連載は、事業承継士・中小企業診断士の中谷健太氏の著書『「子どもに会社をつがせたい」と思ったとき読む本』(あさ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
同じ会社に複数の子を入れてはいけない理由
事業承継の問題は先代が倒れたときに顕在化します。その典型的な問題がきょうだい間の確執です。 子が後継者候補としてベストといっても、同じ会社に複数の子を入れるべきではありません。それを何度も耳にし、わかっていながらもやはり親心から入社させるケースが少なくありません。 ありがちなシチュエーションは「とりあえず複数の子どもを入社させて様子を見たうえで後継者を決めよう」と考えているケースです。やがて子どもたちが経営するようになると、必ずといっていいほどお互いの経営方針や価値観などにズレが生じます。きょうだいという近しい間柄だからこそわがままが表面化することもあるでしょう。 事業が安定していれば次第に社内政治に意識が向きがちになり(トップでない弟が、妻から会社における立場などについて意見を言われ始めることも)、その結果、仲のよかったきょうだいが感情的に対立することもあります。 きょうだいは社員から見たら「2人とも社長」です。 指示系統が一本(トップが1人)だからこそ、社員も自分の従うべき指示がわかります。 にもかかわらず、トップでない他のきょうだいが社長に対して対等な立場で意見を言ってしまうと、社員から見れば実質的に指示系統が複数発生してしまうことになります。これでは社員は困惑します。 それだけでなく、トップではない他のきょうだいが一部の社員を取り込んで派閥を形成してしまうこともあります。こうなると社員が分裂して社内の風土が悪化し、最悪の場合、トップでない弟が社長のあらぬ噂を広めた挙句に、一部の社員を引き連れて独立してしまうというケースも見受けられます。 複数の子どもを同じ会社に入れるなら、社長である親の務めとして、後継者にならなかった者には、ナンバー2として生きることを覚悟させなければなりません。つまり、「社長の方針に合わないなら辞表を出すように」と厳命しておくのです。 冷酷な意見かもしれませんが、家族間で感情的な対立が発生したときは、法律では修復できません。いずれか一方が会社から離れることでしか、抜本的な解決にならないケースが多いのです。やはり、会社に入れるのは親族のうち1人がベストです。 きょうだい経営がうまくいくコツを強いて一つ挙げるとすれば「役割分担を明確にする」こと。事実、きょうだいで営業部門担当と製造部門担当など、役割分担を明確にして成功している企業もあります。「きょうだい経営はうまくいかない」のは圧倒的な事実ですが、きょうだいの結束がプラスに作用すると、これほど強いものもありません。 しかし、うまくいっていない会社がその何倍もあることを忘れてはいけません。きょうだい経営がプラスに作用する確率は非常に低いと感じています。 きょうだいの揉めごとを避けるために会社を分ける方法もあります。この場合、まったく違う事業でお互いが自立して経営できるならいいのですが、製造会社と販売会社といった機能別の分社では、やはり利害関係が発生し、わがままを言い合える関係であるためにうまくいきません。
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