【ラグリパWest】帰れる場所としてのタグラグビー。
タグラグビーは腰の両端についたタグを取るとタックル成立とみなされ、攻撃が止まる。タグを4~5回獲られると攻撃権は移る。1チームの編成は5人ほどだ。 タックルがない分、安全で小学生からラグビー未経験の大人まで親しみやすい。そのため、この教室でも学年を問わず、即席でチームを作って、試合ができる。 そのタグラグビーには小学生のための全国大会(参加は小4~小6)がある。「SMBCカップ 全国小学生タグラグビー大会」だ。来月12月、各都道府県で予選が始まる。来年2月には埼玉の熊谷ラグビー場で本大会が行われる。今回は節目の20回目にあたる。 この大会は17回大会(2020年度)まではサントリーカップとして親しまれたが、19回大会から、三井住友銀行を中核とするSMBCグループが変わって特別協賛になった。 その全国大会を支えるひとりに高橋さんは入っている。日本ラグビー協会の普及・競技力向上委員会に属し、関西地区のタグラグビー部門員でもある。奈良県ラグビー協会の理事も兼務する。 そういう要職にありながら、高橋さんは勝利や権威にのめり込まない。この故郷の奈良で、30年近く初等教育の最前線で、生徒と向き合ってきたことがあるのだろう。 現在、6年生22人の担任だ。高橋さんの勤務先は奈良市立の鼓阪(つざか)だ。 「タグラグビーのクラブはありません。体育の授業ではやっています」 赴任は5校目。鼓阪では3年目に入る。 高橋さんの出身学部は教育。隣県にある和歌山大で4年間を過ごした。入学後、ラグビーを始める。現役時代の体格は165センチ、60キロほど。WTBを任された。 「何か新しいことを始めたいと思いました」高校は地元の郡山。当時は弓道部だった。 弓道は基本的には個人だが、ラグビーは団体スポーツである。そこで集団における自分の立ち位置を学ぶ。 高橋さんの腰が低いのは、大学から競技を始め、スタートが少し遅かったこともあるのだろう。その少し引いた態度も、この教室における出汁(だし)になっている。 その居心地のよさは、この教室を巣立ったり、困りを抱えた子供たちの訪れが、何より物語っている。この教室こそ、タグラグビーが目指す姿を示しているといえよう。 (文:鎮 勝也)