崩壊する「英会話教室」のビジネスモデル…背景に「コンサルティング型」と「オンライン型」の台頭も
受講生数は減少の一途を辿る
英会話教室離れはすでに始まっている。 経済産業省の「外国語会話教室の動向」によると、2022年12月の受講生数は33万9000人。前年同月比8.0%の減少であり、コロナ禍が収束に向かうなかで1割も縮小しているのだ。しかも、35か月連続での減少だった。 一方、語学ビジネスの市場そのものは堅調であり、規模も大きい。 矢野経済研究所によると、2023年度の語学ビジネスの市場規模は前年度比0.2%増の7841億円だった。 そのうち、外国語教室全体の市場は3000億円程度と大きいものの、オンライン語学学習市場が320億円まで成長している。その規模は、書籍教材市場の390億円と近いところまで達した。 映画やドラマを使って英語が習得できるAI英語教材のabceed(エービーシード)は、2024年5月末に累計ユーザー数が440万人を突破。有料会員数は10.1万人となり、この数字は前年同月末比で32%も増加している。 abceedは2024年3月にProプランに対して2割の値上げを行ったにもかかわらず、それでもユーザー数は堅調に推移しているのだ。 このサービスは、ソニーとパラマウントから獲得した映画やドラマ100作品以上に対応しており、映画『トップガン マーヴェリック』や『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』などの人気作で楽しみながら学習が行える。 これらからわかるように、現在は多くの人にとって英会話教室に通うメリットがなくなっているのだ。
ベルリッツの債権178億円を放棄したベネッセ
英会話教室を巡るダイナミックな動きはコロナ前から始まっていた。 2007年に経営破綻したNOVAは、投資会社である、いなよしキャピタルパートナーズの傘下となり、2013年にNOVAホールディングスとして生まれ変わった。 この会社は現在、Gaba(ガバ)、GEOS(ジオス)を傘下に収めたほか、2021年にはZenken(旧:全研本社)の「英会話リンゲージ」事業を取得している。 これは典型的なロールアップだ。 ロールアップとは投資ファンドがよく使う手法で、業界内でのシェア拡大や経営の効率化を図る目的で、同業他社を複数買収して企業価値を高めようというものだ。 また、NOVAホールディングスは、プロバスケットボールクラブ「広島ドラゴンフライズ」を買収。そして、親会社であるいなよしキャピタルパートナーズを通して、パーソナルトレーニングジムを運営するトゥエンティーフォーセブンをTOB(公開買付)で子会社化した。 NOVAホールディングスのロールアップと事業の多角化は、ジリ貧になる業界での生き残り策を示しているかのようだ。 俳優の伊勢谷友介を起用したテレビCMで一躍脚光を浴びたCOCO塾は、経営不振で大人向けレッスンをGabaに、子供向けを「COCO塾ジュニア」に再編する大改革を実施。 しかし、業績を上向かせることができずに、運営するニチイ学館は、2019年に「COCO塾ジュニア」の直営店173教室の閉鎖を決定した。しかも、これはコロナ禍に入る前の出来事である。 非上場化したベネッセを苦しませたのも、英会話教室だった。1993年に連結子会社化したベルリッツは、2018年度に47億円、2019年度に31億円の営業赤字を出していた。 さらにコロナ禍で赤字額は70億円近くまで膨らんでしまったのだ。切り捨てるように、2022年にカナダの特別目的会社に売却。ベネッセは、ベルリッツに対する債権178億円を放棄した。 ニチイ学館、ベネッセにとって英会話教室事業は、鬼門になっていたのである。