新日本酒紀行「副将軍」
● 老舗の総合酒類メーカーを盛り上げる!兄弟の快進撃 水戸黄門を示す「副将軍」を酒名に冠した明利酒類は、全国新酒鑑評会で通算15回金賞を受賞する銘醸蔵。1970年代、元副社長で仙台国税局鑑定室長も務めた小川知可良さんが、爽快な吟醸香を生み、酸の生成が少ない「明利小川酵母」を開発。日本醸造協会が10号酵母の名で頒布し、全国の酒蔵が使う。社内に酵母専用の研究室を設け、酵母の原株をマイナス85度で冷凍保存し優良種を販売する。95年にM310酵母を開発すると「金賞が取れる酵母」として人気爆発。清酒以外にも梅酒30種、茨城県産の芋、麦、米焼酎、和ウオッカ、和ジンに醸造アルコール、調味料の製造も行い、経営の柱を幾つも持つ総合酒類メーカーとして成長した。 【写真】「酒造りのこだわり」はこちら!
だが、東日本大震災で甚大な被害を受け、コロナ禍で売り上げが激減。会社存続の危機に。それを機に、5代目加藤多彦さんの次男、喬大(たかひろ)さんが広告代理店を辞めて入社。翌年、長男の雅大(まさひろ)さんが銀行から転職し、第二の創業と銘打って新製品開発に邁進。醸造アルコールを蒸留した「メイリの65%」は飲める消毒液として注目され、続く手指消毒液「MEIRIの消毒」も大ヒット。最高峰の日本酒を目指して3年かけ「雨下-uka-」を完成。特等米の山田錦にM310酵母、自然の重力で搾る「雫落とし製法」を採用し、クリアでリッチな凝縮感を実現。600ml3万3000円が即、完売した。地域に根差すよう蔵開きや蔵見学も開催し、60年ぶりにウイスキー事業を復活。兄弟の快進撃は続く。
(酒食ジャーナリスト 山本洋子) ※週刊ダイヤモンド2024年5月11日号より転載
山本洋子