齋藤飛鳥が『【推しの子】』アイ役を「無理だな」「私じゃない」と断った深い理由。2度目のオファーは「腑に落ちた」
推しの「もちろん!」、本当に「もちろん」?
――アイを演じた時に、アイドルとして「見たことある光景」や「言われたことがある言葉」はありましたか? ありました。印象に残っているのが、アイが何か質問されたり、聞かれたりした時に、本当は全然違うのに「もちろん!」と応えるところ。自分にもあったかもな……と思い出しました。 ――本心でないながらも「もちろん」と言ってしまう? 「あなたのキャラクターってこうですよね?」という確認みたいな……そういう気持ちが無意識に込められている言葉っていうんですかね。そのたびに「私はそう見られてるんだな」「じゃあこっちに寄せてみよう」と思ったりしていました。 でも、自分では発言していない言葉を「あなたはこういう話をしていたよね?」と言われることもあって。これに「もちろん!」と返すのは、自分の中では違うことで、心に引っ掛かりました。でもちょっと諦めていた部分もあったかな。 求められるキャラクターに寄せて喜んでもらえると嬉しいし、「想定していた私と本当の私のギャップでファンの方をがっかりさせてしまったかもしれない」と不安になることもありました。 ――キャラクターはアイドルにとって必要な要素だと思いますが、一方で心が蝕まれることもありそうです。素直に生きられないことでもあると思うので。 そもそも私は小学生の時から「明るいキャラになろう」と思ったり、「静かなキャラに変わろう」としたりと、自分のキャラに対する気持ちが強いタイプでした。 13歳の時に乃木坂46に入ってからは「アイドルはかわいいものが好きでなきゃいけないし、誰かと被ってもいけない」と気張っていて……自分からぶりっ子キャラをやろうと頑張っていたんです。でも、全然ダメでした。
「洋楽好きは完全に“イキり”でした」
――「これはダメだ」と感じ取るのはどんな時でしょう? ファンの方の顔色から察することが多かったです。握手会は皆さん顔に感情がダイレクトに出るので「なんか違うな」とか「そんな感じなんだ……」と言われたり(笑)。 でも、だんだん「キャラクターは後からついてくるものなんだ」と気がついて、その流れに乗るようにしました。その方が自然だし、メンタルも安定する。真剣に取り繕っても、ファンの方から見て「違う」のであれば、意味のない努力だなぁと思い始めて、キャラ作りに関しては、適当だったように思います。 なんとなく、毒舌キャラみたいな立ち位置ができてからも、目の前のファンの方に「こう言うと喜んでもらえるかな」と思いながら発した言葉で「あれ…傷つけてしまったのでは!?」と焦ることもありました。 ファンの方であっても、自分が想像していたように感情が動くわけはないんですよね。「センターになって欲しい」と言われて、その場所に行き着いたとしても「センターになったからもう応援しない」と離れる人もいる。相手に期待しすぎないようにしていたので、メンタルが保てていたような気もします。 ――たびたび話題になる「ドープな洋楽が好き」という齋藤さんの一面は、いつから培われていったのでしょう? 洋楽を聴き始めたのは家族の影響だと思います。母親が海外の人なので英語の歌は小さい時から家で流れていて、耳に馴染んでいた。そこから兄が聴いていたものをよく真似して聴いていました。エヴァネッセンスとかですかね。 「自分が好きなのはUKロックだ」とはっきりしたのは……何かきっかけがあったわけではなくて、ただイキってただけです。 ――イキり!? 自分が好きな音楽と、自分が歌う音楽とのギャップでフラストレーションを感じたりはしませんでしたか? 本当はバンドをやりたかったとか。 いや、なかったです(笑)。最初に洋楽が好きだと話をした時に、ちょっと面白がってもらえて「一番いい生き方を見つけたな」と思ったんですね。好きなものを好きだと言って喜んでもらえるのがすごく嬉しくて、深堀りしていきました。一時期はイキりが極まって「UKロックしか聴かない」とか言ってましたけど。 最近はイキりが抜けてきたのでいろいろな楽曲を聴いてますが、なんだかんだ立ち戻ってバッドフィンガーをよく聴いてます。もともとはビートルズの弟分的な切り口で聴き始めたんですけど、メロディーが私の好みで何年も前からずっとリピートしてます。音楽自体もいいのですが、バンドメンバーの波乱万丈な背景や因果関係も含めてグッときます。