【オーストラリア】金融・法律業界でAI導入進む、対策遅れも
オーストラリアでは金融・法律業界で人工知能(AI)の導入が進む一方で、管理体制やデータ保護に関する課題が顕在化している。オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、AIを導入している金融機関がAIの結果の偏り(バイアス)や消費者に対する影響について十分な対策を講じておらず、市場信頼性の低下や消費者の不利益が懸念されると報告した。また法律業界でも、個人利用の増加によりデータ流出リスクや倫理的な懸念が指摘されている。 経済紙オーストラリアン・ファイナンシャル・レビュー(AFR)などによると、ASICは金融サービス企業23社によるAIの使用例624件を調査。AIのリスクやバイアスを抑制するポリシーが整備されている企業は12社にとどまった。 特に消費者の信用調査にAIを利用する場合、適切なリスク評価がされずに融資の拒否や減額を引き起こす可能性があるという。 ASICのロンゴ委員長は、「金融機関が競争圧力に負け、ガバナンスが追いつかない形でAIを導入すれば、消費者への不利益や市場信頼の喪失につながる可能性がある」と警鐘を鳴らした。 ■「持ち込み型」AIにリスク 法律業界では、弁護士が個人で利用するために自ら業務に持ち込むAIツールに依存する傾向が顕在化してきた。 オーストラリアの法律事務所は72%が公式にAIを導入しておらず、代わりに弁護士の約3割が持ち込み型のAIツールを利用している。個人利用の増加は、適切な管理が不十分なままAIが使われることで生じる「意図しない結果」をもたらす可能性があるという。 トムソン・ロイターのアジア新興市場担当バイスプレジデント、オルソン氏は、「企業レベルでデータ保護を備えたAIソリューションを導入する必要がある」と強調した。