弁天ランド×かりんちょ落書き×SPRINGMAN 表現力の高いアーティストが揃った『Grasshopper vol.24』ライブレポート
シンガーソングライターで自身のグッズデザインなども務めるクリエィティブなかりんちょ落書き。本公演では、バンド編成での出演だ。 「今日は暑い中、お集まりいただきありがとうございます! 音楽で暑さをちょっとでも忘れられるライブにできたらなと思うんですけど、よろしくお願いします!」とフロアに挨拶すると、「海が満ちる」が始まる。爽やかなバンドサウンドがフロアに染み渡り、まるで会場に風が吹いているかのようだ。1曲目から観客はすでにノリノリで、その様子にかりんちょ落書きも「サンキュ!」と礼を述べる。 2曲目「change!」では壮大なサウンドで、かりんちょ落書きとサポートメンバーたちが観客のボルテージをさらに煽る。どことなく平成味を感じ、目を閉じると学生時代の夏の記憶が蘇る「溶けあうくらい」では、サポートドラマーとのコーラスが懐かしいハーモニーを奏でた。 「今の歌は夏の歌です。僕は曲を作るときは、夏の歌を作りがちなんですね。なんでかというと、夏って人との距離が近くなるような気がするんですよ。恋焦がれるというか、いろんな人に思いを馳せる季節だと思います。次の歌は、そんな夏の、僕の恋の歌です」 そうして始まった「マジックアワー」、好きな子の様子を繊密に描写した詞を歌うかりんちょ落書きの声が響く。ギターのカッティングから段々と熱を帯びていくサウンドは、まるで魔法にかかる瞬間を見ているようだった。 グッズ紹介を挟み、ギターを手放し歌い出したのは祖母へ思いを馳せて作ったという「white blonde」、洋楽風の音色から始まり、激しめな転調を経ると近未来感溢れるメロディになり、一気に観客の拳が上がる。「管制塔」では、青い照明も相まり幻想的な雰囲気にフロアは横揺れする。<見つめるだけじゃ足りないよ 言葉を交わそう>歌詞に沿い、観客と目を合わせるかりんちょ落書き。 真っ暗な中、かりんちょ落書きだけが照らされる。「少年」が始まり彼の声がフロアに響く。<少年よペンを持て 一冊のノート持て 退屈を想像で 埋め尽くせ 埋め尽くせ>人差し指を立てながら叫ぶように歌うかりんちょ落書き。その姿は、観客だけでなく自分にも言い聞かせているように見えた。 歌い終え「かりんちょ落書きでした!」と言うとサポートメンバーと自身の紹介をし、ラストソング「dari」が始まる。祭り感を掻き立てるエレクトリックなキーボードにカラフルな照明で、弾けたように踊るフロア。 満足な表情を浮かべ演奏を終えると「また会おう!どっかでどっかでどっかでまた会える!」そう約束し、彼はステージを後にした。 手練れたサポートメンバーで構成されたバンド編成と情緒的な世界観で、より重厚感が増した姿を見せてくれたかりんちょ落書き。公演の前日(7月21日(日))に誕生日を迎えたという彼は、きっとこれからも進化し続けるだろう。今後、どんな音楽を描いてくれるか楽しみである。 3組のトリを飾るのは、4月にファーストミニアルバム『SCREW』をリリースした荒川大輔(g/vo)のソロプロジェクトSPRINGMAN。 観客たちの心をさらに弾ませるようなSE・LOVE PSYCHEDELICO「Freedom」が流れると、荒川がタオルを掲げてステージに登場し、観客は拍手で彼を迎える。 「心境」1曲目からフルスロットルに全力で声を出す荒川と、サポートメンバーと一緒に奏でるバンドサウンドが、身体に響き心地良い。荒川のギターソロではレスポールが照明に反射し、その姿はあまりにも格好良かった。 「SPRINGMANです! どうぞよろしく! あなたが来てくれて良かった。俺、君がいなきゃだめです」<君がいなきゃダメです>という歌詞が実直なラブソング「カポック」、目を閉じ気持ちを込めて歌う荒川は微笑んでいる。青い照明に包まれながら、「1人の帰り道に自分と向き合う時にポツリポツリと思うこと。“とりとめもなく”」という言葉で始まった「とりとめもなく」では、ギターのカッティングが聴いている側の感傷を掻き立て、まるで夜に吸い込まれていく様だった。 弾き語りで始まる「勤労」、荒川の声だけがフロアにジンと響く。観客も頷きながら彼の声に耳を傾けていた。段々とサポートメンバーの音が重なっていくにつれ、観客が全身を使いリズムをとっている様子がとても印象的だ。 歌い終え勢いよく水を飲むと、サポートメンバーの紹介を経て自己紹介をする荒川。野球を諦めた事、ミュージシャンになろうと思った事、浪人を経て元バンドメンバーと出会った事……。「(いろいろな人が自分を応援してくれるけど)本当は俺がみんなのことを応援したい。ここに来るまでたくさん逃げた。でもたまには逃げてもいいと思うんです。友達が助けてくれたように僕があなたを助けたい」ファンやサポートメンバーへの感謝と意気込みを述べると、「エスケープコール」が始まる。リスナーに寄り添うかのように振り絞りながら歌う荒川と頷きながら聴いている観客。その姿はまるでお互い支え合っているように見えた。 「いろいろあるけれど、もう全部一旦忘れて! いつか思い出になって、笑い話になると思います!」と言うと「さよなら北千住」が始まる。ミラーボールが輝いた空間に、さらにギアがかかった荒川。フロアのテンションもますます上がっている。 一呼吸し挨拶をすると最後の楽曲「右にならえ」が始まる。荒川が片脚を上げ、弾みをつけるようにギターを弾く。汗が照明に反射する。ロックな楽曲に、思わず飛び跳ねている観客もいる。 演奏後「ありがとう!」そう言うと彼は深々と一礼し、ステージをはけていく。すると間髪入れずにアンコールを望む拍手が起こった。 それに答えるように再びステージに現れる荒川たち。 「『Grasshopper』って名前には近いものを感じておりまして、私『SPRINGMAN』って春じゃなくてバネの方なんですけど。ピョンって飛んで、落ちて、飛んで。(まるで)人生みたい。でもみんなにとって『バネ』みたいになれたらいいなって思ってます。これからも歌い続けていきたいと思うし、あなたと一緒に生き抜きたい」そして始まったのは「still writing…」、<歌って欲しいって君が言うラブソングが嫌いだ>甘い声で歌う荒川。サポートメンバーの心から楽しそうな笑顔も印象的だった。 アンコール曲を終え「ありがとうございました!」と言うと荒川は深々と礼をし、フロアを見渡し力強く頷いた。 表現力の高いアーティストが揃った本公演は、楽曲の世界観や演奏に魅せられ、暑さを忘れる事のできる爽やかなライブとなった。 次回の『Grasshopper vol.26』は、9月8日(日) に渋谷Spotify O-nestで「えんぷてい」「goethe」「Geloomy」を迎えスリーマンで開催予定だ。夏夜に彼らは、一体どんなライブを見せてくれるのだろう。 Text:おはた <公演情報> 『Flowers Loft 4th Anniversary × チケットぴあ presents. Grasshopper vol.24』 2024年7月22日(月) 東京・下北沢Flowers Loft 出演:弁天ランド/かりんちょ落書き/SPRINGMAN 【セットリスト】 ■弁天ランド 1. ごめんね 2. ゼンボーイゼンガールズ 3. 白朝夢 4. rove song 5. Sunday Girl 6. 春をかぐ街で 7. レモンサワー 8. 記憶に溶けて ■かりんちょ落書き 1. 海が満ちる 2. change! 3. 溶けあうくらい 4. マジックアワー 5. white blonde 6. 管制塔 7. 少年 8. dari ■SPRINGMAN 1. 心境 2. カポック 3. とりとめもなく 4. 勤労 5. エスケープコール 6. さよなら北千住 7. 右にならえ En. still writing… <次回公演情報> 『Grasshopper vol.26 supported by チケットぴあ』 2024年9月8日(日) 18:30開場/19:00開演 会場:Spotify O-nest 出演:えんぷてい/goethe/Geloomy
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