日本製の機器、中国経由でロシア軍関連企業に 経済制裁をすり抜けか 米調査団体が指摘
米国の民間調査団体「先端防衛研究所」(本部・ワシントン)は18日、ロシア軍需産業による西側の先端機器調達の手法について報告書を発表した。報告書は日本の精密工作機械メーカー、ツガミ社のCNC(コンピューター数値制御)機器が政府の経済制裁をすり抜け、中国や中東の企業経由でロシアに輸出されていると指摘した。 【写真】5月9日、モスクワで行われたロシアの軍事パレード ツガミの本社は東京都中央区で、中国や東南アジアなどに拠点を持つ。ツガミは産経新聞の取材に「事実関係を調査中だ」とコメントした。 報告書によると、ロシアは2022年2月のウクライナ侵略前、ツガミ製品を日本の商社から輸入していた。翌3月、日本政府がロシアへの経済制裁を発動すると、アラブ首長国連邦(UAE)の電子機器関連企業、中国深圳市の電子機器取引企業の2社を通じて、ツガミ製品を調達するようになった。 ■UAE企業が発注元に 輸出は主にUAE企業が発注元となり、中国企業がロシアに移送したとみられており、報告書は侵略開始から23年末までに、中国企業を介してツガミ製品を含んだ積み荷が100件近くロシアの軍需関連企業に渡ったとしている。中国企業はウェブサイトで日韓や欧州の中古機器を扱っていると宣伝し、ツガミの2001年製と05年製のCNC旋盤2種を目録に載せている。輸出された製品は中古品だった可能性がある。 CNC旋盤は高速で高密度の金属加工を可能にする機械で、ロシアはミサイルなどの武器製造に利用したとみられている。ウクライナのメディアは今春、ロシアのショイグ国防相(当時)が軍事工場を視察した際、日本のCNC旋盤が映っていると指摘していた。仲介役のUAE企業は昨年、米国の制裁対象になった。 ■中古品転売で制裁逃れ? 報告書はまた、ロシアは西側の経済制裁を受け、武器製造に必要なCNC製品の調達を中国に頼る一方、西側の中古機器をトルコや中国の仲介業者を通じて輸入してきたと指摘。中国の産業ロボット技術は日欧に比べて「2、3世代遅れている」とするロシア専門家の見方も伝えた。そのうえで、西側諸国が協力し、第三国の仲介業者に対する監視を強化すべきだと主張している。 日本の経済産業省の貿易管理担当者は、ロシアに対しては経済制裁のほか、軍事転用可能な精密機器への規制など重層的な監視が行われていると説明した。そのうえで、第三国を介しての中古品転売の規制は難しいとして、「抜け穴をどう防ぐかは、先進7カ国(G7)共通の課題だ」と述べた。(三井美奈)