7日間JR乗り放題のパスで日本を旅行した実感。日本の物価は統計上の数値以上に上がっている。物価で調整され、為替は意外と円高にならないとみる
あけましておめでとうございます。 これが今年1本目の連載記事になります。 今回の年末年始は旅行していました。 【詳細画像または表】 カナダのウィスラー(Whistler)スキー場に行き、日本にも旅行しました。 日本では7日間JR乗り放題のジャパン・レール・パスで、東京、鎌倉、箱根強羅、京都、広島、福岡、奈良を回りました。 1年ぶりに日本に来て、いろいろな変化を実感しました。 ●物価は結構上がったと感じた。皆が想定している円高には、日米金利差が縮んでも、意外とならないかもしれない。 経済統計の数値によると、2023年、日本のCPI(消費者物価指数)はおおよそ3%台で推移してきましたが、実感としての物価はもっと高いです。これはアメリカでの経験といっしょです。CPI統計は物価のバスケットで計算するものですが、含まれていないものも多いのです。 実感で言うと、20%ぐらい値段が上がっているものもあると感じました。特に観光地などの物価はかなり上がっています。京都の普通の定食屋で、ランチセットが2600円ほどでした。米ドルに換算すれば普通の値段だと思えましたが、円で考えたら高いなと思いました。 これは私が想定していたことです。国も政策的に物価が上がるのを狙っています。 [参考記事] ●米ドル/円相場が急落したが、2024年はどう動く? 米ドル/円、S&P500、米日金利差のチャートで見えてくる為替変動の3つのドライバーとは? ●90年代には日米金利差が約5%も米国優位だったのに米ドル安・円高に。為替は金利差だけによって動くものではない 1990年代のことを例に説明したいと思います。 1990年代に、日本経済は弱かったです。日本国債(1年もの)の金利は1990年初めは7%台でしたが、そこからゼロ金利に近づいていきました。一方、この時の米国債(1年もの)の金利は5.5%ほどでした。日米の金利差はゼロ近くだったところから、約5%米国の方が高い状態になりました。 米国の方が約5%も高い金利差から考えると、本当は米ドル高・円安になるはずですが、1995年には1ドル=80円近辺までの米ドル安・円高になりました。 この例を見ると、為替は金利差だけによって動くものではないことがわかります。今回も金利差が縮んだからといって、必ず円高に戻るわけでもないと言えます。物価の要素や他の要素もあります。 確度が高いとまでは言えない予想にはなりますが、私は日米金利差が縮んでも、少しの円高に止まるのではないかと思っています。 [参考記事] ●米ドル/円相場が急落したが、2024年はどう動く? 米ドル/円、S&P500、米日金利差のチャートで見えてくる為替変動の3つのドライバーとは? ●中国人観光客は今回のインバウンドではそこまでいない。欧米の観光客は結構増えた。日本は高い国というイメージから安い国に。 周りの観光客に中国人は少なかったです。中華系はいましたが、台湾系、香港系が多かったです。これは中国の国内経済の弱さを反映しているのではないかと思いました。 一方、オーストラリアや欧米の観光客は以前より増えた気がしました。アメリカの友だちと話すと、「日本は高い」という以前のイメージが、「日本は質がいい、かつ安い」というイメージに変わり始めていると感じました。 これから日本の観光産業は多少の円高があったとしても、繁盛するのではないかと思います。 ●オーバーツーリズムを実感 今回の旅行では、みんな親切でしたが、京都のバス運転手のあるエピソードには少しビックリしました。 このバスは降りる時に運賃を支払うことになっていました。しかし、バスは混んでいたため、前の方へ行けなかった外国人が、いったん後ろのトビラから降りて、前に戻って運賃を支払うつもりだったようでした。 ところが、バスの運転手は外国人乗客が運賃を支払わずに降りると思ったようで、すごく怒り出して、スピーカーを通し、大きな声で怒鳴ったのです。結局、乗客は前に来て運賃を支払いましたが、これは昔ならあり得ない反応だなと思いました。やっぱりサービスワーカーは疲れているのだろうと思いました。 ●外国人労働者が増えた 昔からコンビニには若い外国人店員がたくさんいましたが、今回は飲食店にも結構いるようになったと感じました。 日本は人口が減り、外国からの労働者がいないと日本社会、日本経済は回っていかないと思います。政策的にどうすればいいかを考えなければいけないと思います。 ●これらの感触から示唆されることは? 結論としては、まず、インフレが進めば、物価で調整されるので、為替は意外と円高にならないのではないかと思います。それと、ポイントは賃金の十分な上昇があるかどうかです。これによって、国内経済の状況は大きく変わると思います。 日本の金利上昇は短期的というより、長期的なリスクだと思います。 ●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
ポール・サイ
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