フジ「わたしの宝物」が描く“生々しい夫婦の姿”。「昼顔」「あなして」に続く、複雑な恋愛ドラマ
■はっきり描かれていない夫婦の謎 この先、父性が宿った宏樹と美羽は、子どもを中心にした仲睦まじいふつうの家庭を築いていくのかもしれない。しかし、どこかのタイミングで美羽は稜が生きていることを知り、子どもを可愛がる宏樹との間で、苦しむことになる。そのときに美羽はどちらを選ぶのか。それが本作の見どころであり、本筋になっていくのだろう。 一方、これまでにはっきり描かれていない謎がある。 美羽と宏樹の夫婦関係はなぜここまで冷え切っているのか。結婚前の同じ職場の2人の様子や、結婚してすぐの頃は、お互いを思いやる優しい男女の間柄に見えた。また、宏樹は仕事のストレスを美羽にぶつけていることを自覚しており、それに対する葛藤もある。
にもかかわらず、仮面夫婦を通り越して、相手を徹底的に無視しながら突き放すように一緒に暮らす冷たい夫婦になっている。 2人の関係性がそうなった理由が何かあるはずだ。それは、2人の心に深い傷をつけたトラウマになる出来事なのだろう。 それが子どもにまつわることなのか。この先、美羽が子どもの父親を選択するときのカギになるに違いない。 第2話までで見られたもうひとつのポイントは、美羽の振り幅の広さだ。 第1話の前半は、モラハラを受けながらも健気に生きる、いつも笑顔の明るい妻だったが、後半では不貞相手の子を夫の子として育てようとする悪女の顔になっていた。
そして第2話も、前半の美羽は、宏樹に真実を告げて別れ、ひとりで子どもを育てていこうとする真っ当な姿勢を見せるが、後半では翻意し、自身の心も真実も封印して家庭生活を続ける悪女に戻る。 そこに映る無関心な夫と不貞妻の裏の顔は、状況や程度は異なれ、どこにでもある、生々しい夫婦のリアルな一面でもあるだろう。この先、妻の振り幅のパターンがフォーマットになっていくとしたら、毎話どのような善悪の顔が映されるのか興味深い。