絵本『あらしのよるに』が原作の新作歌舞伎で、中村壱太郎が山羊のめいに
──初日を迎えて 9月7日にオンラインにて取材 実際に舞台に立つことで、どんなことを実感されていますか? 壱太郎:台風の影響で予定が変わり、今回は本当に稽古が少なかったのですが、今日で合計7回の公演を終えて、お客様とのキャッチボールも含めて、すごくまとまってきた気がして、1つの形として見えてきた感じがしています。獅童さんから「もふもふ感を出して」とおっしゃっていただいたので、最初はほわんとしていたのですが、めいには守らなくてはならないものがあって、めい自身も強く生きていこうという気持ちで成長する姿をご覧いただけるようにしようと思っています。そんなめいに獅童のお兄さんが毎日違う形で寄り添ってくださるので、どんどんお芝居の中に生まれていくものがあると感じています。作品としてのクライマックスはありますが、いろいろな場面に起伏があって、その起伏の大きさが毎日違うので、何度ご覧いただいても楽しんでいただけるのではないでしょうか。 ──『あらしのよるに』を通して、何か新しい引き出しを得ることはできそうですか? 壱太郎:めいは山羊なのでこういう動きだという決まりはないと思いますが、歌舞伎にある狐とも、猫とも違うところを出したいという思いがあります。その中で山羊はふわふわしている動物ではないけれども“丸い”というイメージを持って演じようと考えました。今後、動物を演じることがあったら、どういう形の動物なのだろうかということを意識する気がしています。丸なのか、三角なのか、四角なのか、立体的に表すときに、形だとイメージしやすいのかもしれません。めいがどんな輪郭の山羊なのかを考えたときに、ほわんとした丸い山羊を思い浮かべると、おのずと動きもそれに伴っていく感じがします。 ──京都に来たら必ず行くというオススメの場所があれば教えてください。 壱太郎:僕が南座以外で京都で必ず行く場所を挙げるとしたら「伏見稲荷大社」です。毎年、年末になると御守りを替えているからです。 中村壱太郎(NAKAMURA KAZUTARO) 東京都生まれ。父は四代目中村鴈治郎。祖父は四代目坂田藤十郎。1995年大阪・中座『嫗山姥』の一子公時で初代中村壱太郎を名乗り、初舞台。古風な佇まいと現代的な風格を併せ持ち、上方歌舞伎を中心とした女方として活躍し、『金閣寺』の雪姫、『京鹿子娘道成寺』の白拍子花子といった女方の大役に挑む機会も増えている。20年には「中村壱太郎×尾上右近ART歌舞伎」公演を配信ライブで開催し、海外配信や映画公開されるほど話題となった。 BY SHION YAMASHITA 山下シオン(やました・しおん) エディター&ライター。女性誌、男性誌で、きもの、美容、ファッション、旅、文化、医学など多岐にわたる分野の編集に携わる。歌舞伎観劇歴は約30年で、2007年の平成中村座のニューヨーク公演から本格的に歌舞伎の企画の発案、記事の構成、執筆をしてきた。現在は歌舞伎やバレエ、ミュージカル、映画などのエンターテインメントの魅力を伝えるための企画に多角的な視点から取り組んでいる。
九月花形歌舞伎 『あらしのよるに』 会場:南座 住所:京都府京都市東山区四条大橋東詰 上演日程:2024年9月4日(水)~26日(木) 問い合わせ:チケットホン松竹 TEL. 0570-000-489