部屋にうずくまりスマホに書き込んだSOS。子どもの自殺を防ぐため、学校支給の端末から「生きるための情報」を
過去最多水準の子どもの自殺。増加傾向に
2023年に自ら命を絶った小中高生は513人で、過去最多の水準だった。2014年の子どもの自殺数は278人で、子どもの自殺は近年増加傾向にある。 政府も子どもの自殺対策に力を入れており、対策案の中には、1人1台端末を利用し、児童生徒の心身の変化を把握し、自殺防止に繋げる取り組みもある。 SOSフィルターは、Google ChromeかMicrosoft edgeを利用する端末であれば、教育委員会などが管轄の学校の全児童生徒の端末に無償でインストールすることができる。 個人が特定できる情報は収集せず、誰が検索したかなどの通知が、学校や管理者に届くことはない。 これまでにも、SOSフィルターと類似するサービスはあったが、子どもが自殺関連用語を検索すると画面が真っ黒になったり、検索結果が表示されなかったりするなど、制限・監視的な対応が取られる。 SOSフィルターでは、子どもたちが苦しい気持ちを抱えて検索した時、シャットダウンするのではなく、相談窓口やセルフケアの方法を伝えるなど、解決の糸口となる情報を表示する。 検索した際にいきなりポップアップが表示されると、子どもがびっくりすることも考え、あたたかい色味や、やさしいタッチのイラストが添えられている。 OVAは昨年11月~今年3月末、私立の中学校・高等学校でSOSフィルターのβ版試験導入を行った。 生徒数981人を対象に同校で配布されている端末にSOSフィルターをインストールし、自殺関連用語935個を登録した。 試験導入の結果、5カ月間でSOSフィルターは134回表示され、月平均で27回だった。 OVA代表理事の伊藤次郎さんは、子どもたちに必要なのは「死ぬための情報ではなく、生きるための情報に繋げること」と話す。 β版では、自殺関連用語のみのワード登録だったが、本ローンチでは、虐待やいじめ、性暴力被害、自傷、精神疾患などの関連ワードも登録し、それぞれの悩みに対応する相談先などを表示する。 ポップアップの内容は、虐待や性暴力被害など、それぞれのエリアの専門家の助言を得て作成された。 1年半の企画・開発期間を経て、OVAは7月中旬にSOSフィルターをローンチし、全国の教育機関が無償でダウンロードできるようになる。 OVAはローンチに向けて6月30日まで、クラウドファンディングを行なっている。 <取材・文=冨田すみれ子>