ユース取材ライター陣が推薦する選手権11傑vol.3
第103回全国高校サッカー選手権が12月28日に開幕します。ゲキサカでは「選手権注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣に選手権注目の11選手を紹介してもらいます。第3回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史記者による11名です。 【写真】なでしこDF北川ひかるが母と韓国旅行「とてつもなく美人」「モデル?」「アップ、めちゃカワ」 土屋雅史記者「2024年シーズンの日本サッカー界を締めくくる、最後のビックコンペティションに当たる高校選手権。11傑の選考基準としては、毎回設けている 『1チーム1名』と『過去にご紹介したことのない選手』に、『強い熱量を発している3年生』を加えました。3年生にとっては、泣いても、笑っても、これが高校最後の晴れ舞台。とにかく全力で選手権を楽しんでください! 以下、土屋記者が推薦する11名 GK大橋藍(帝京高3年) 昨年からカナリア軍団のゴールマウスを守ってきた熱血系守護神。選手権予選準々決勝では負傷欠場を強いられながら、“マネージャー”としてベンチに入ると監督以上にテクニカルエリア近くまで飛び出し、チームメイトを鼓舞。勝利の瞬間には誰よりも大きなガッツポーズを繰り出した。スタメンフル出場で15年ぶりの全国切符を掴んだ決勝の試合後には、「勝ちたいという想いや重圧から解放されたというか、レフェリーが笛を鳴らした瞬間にもう力が入らなくて、『やったんだ……』という感じでした」とピッチ上で涙を流す一幕も。試合中のPKを蹴ることもある足元の上手さも備えつつ、最後方から大声でチームを勇気付けてきた背番号1が、まずは開幕戦の国立競技場を熱く燃やす。 DF竹内利樹人(堀越高3年) 全国4強まで勝ち上がった昨年度からレギュラーを務める右サイドバックは、選手主導で試合の戦術や交代も決めていくボトムアップ方式を採用するチームのキャプテンに就任したものの、インターハイ以降は長期離脱。苦しい時間を経験しながらも、選手権予選の準決勝から戦列に復帰すると、決勝ではスタメンで登場し、2年連続となる東京制覇に貢献してみせた。「去年の準決勝で近江に負けた時から、『絶対国立に戻ってくる』という気持ちでこの1年間はずっとやってきたので、その集大成を見せたいと思います」。いろいろな面で昨年と比較されながら、小さくない重圧と戦い続けてきたシーズンの集大成。グレードアップして帰ってきた2024年の『堀越のキャプテン』に、是非注目してほしい。 DF柴田陽仁(東福岡高3年) 3年ぶりに選手権へ帰還した『赤い彗星』の精神的支柱を務めるキャプテン。右も左も高次元でこなせるサイドバックは「そんなに足も速くないですし、身長も大きな方ではないので、相手が嫌がる間合いをずっと意識しています」と、強烈なアタッカーが居並ぶプレミアリーグでも常に“間合い”を意識してきたことで、守備での1対1に磨きを掛けてきた。最高学年になって初めて味わう冬の全国。「最近はタイトルが獲れていない中で、『強いヒガシ』を取り戻したいので、やっぱり東福岡は強いと思ってもらえるような、全国でも赤い彗星に憧れてもらえるようなサッカーをして、結果を残したいですね」。明確に目指すのは頂点から見る景色。国立競技場の表彰台での戴冠のみだ。 DF勝天嶺(新潟明訓高3年) 一般受験で新潟明訓の門を叩き、より勉強に力を入れるコースに通っているため、午後の授業のコマ数が多いこともあって、その分の練習時間を確保しようと4時半起きで朝練に通い続けてきた努力家。予選準決勝では自らがプレーしていた長岡FCジュニアユースと関係の深い、インターハイ全国4強の帝京長岡高を倒し、喜びに浸っている様子が印象的だった。好きな選手にジョルディ・アルバを挙げるように、左利きの左サイドバックとして攻撃参加とクロス精度の高さは大きな武器。真剣なサッカーは高校までと決めており、「人一倍頑張って、勝利に貢献して、良いサッカーの終わり方ができたらなと思います」と今大会に懸ける想いはとにかく強い。 MF星慶次郎(尚志高3年) プレミアリーグでも対戦相手からキーマンに名前を挙げられることも多く、仲村浩二監督も「神田(拓人・早稲田大)みたいになってくれるんじゃないかと期待しています」と明言するような、今季の尚志には欠かせない絶対的な中心選手。4バック時にはボランチを、3バック時には中央のセンターバックをこなせる能力が、今年のチームの戦い方に小さくない幅をもたらしている。自身で感じているストロングポイントは「ボールを奪うところと、縦パスのようなチームにスイッチを入れるパスだと思います」とのこと。「監督には結構自由にやっていいと言われているので、自分が前でも後ろでもコントロールできるようにやっています」とも言い切る通り、ピッチ上の指揮者としての貫禄も十分だ。 MF石井陽(前橋育英高3年) タイガー軍団にとって特別な“14番”を託されたキャプテンは、なかなか結果の出なかったシーズン前半戦を経て、「一時期は自分が言い過ぎてしまって、雰囲気が崩れてしまった部分があったんですけど、そこから自分のキャプテンの在り方とか、チームとしてどう戦っていきたいかが整理されたので、今は一体感が出てきているのかなと思います」と個性派集団を抜群のリーダーシップで牽引してきた。正確な配球力で攻撃をコントロールする一方で、球際にも激しく行ける守備力も有したボランチとしての能力も一級品。「小さいころから見ていた大会で、活躍すればいろいろな未来が見えてくる場所だと思うので、優勝目指して頑張りたいと思います」。7年ぶりの全国制覇を虎視眈々と狙っている。 MF柚木創(流通経済大柏高3年) タレント居並ぶ流通経済大柏の10番を渡されているだけあって、携えている攻撃力はチームの中でもトップクラスのファンタジスタ。2年時から年代別代表に選出されるなど、大きな期待を背負ってきたものの、今季は秋口に負傷離脱を強いられたことで、選手権予選はスーパーサブ起用に。「予選ではもう一段階、二段階ギアを上げなきゃいけない状況で、チームとして上げ切れなかったのは自分の大きな反省点で、みんなからも『全国でやるのはオマエだぞ』と言われているので、全国では自分が点を獲って、チームを勝たせなきゃいけないなと自覚しています」。3年目にしてようやく掴んだ初めての夢舞台で、溜め込んできたエネルギーを爆発させる準備を整えている。 MF大沢悠真(青森山田高3年) シーズン序盤はベンチスタートが多かったが、プレミアリーグの開幕戦でもファインゴールを叩き込むなど、アグレッシブな推進力と献身的な運動量を武器に少しずつ存在感を高めると、5月以降は一貫してスタメンを確保。青森山田の攻撃陣の中でも必要不可欠なメインキャストへと成長を遂げた。昨季のチームが日本一を勝ち獲った国立競技場での決勝は、体調不良もあって青森からのテレビ観戦に。「小さいころから選手権はずっとカッコいいと思っていましたし、檀崎竜孔さんの代も決勝戦を見ていたので、自分もあのピッチに絶対立ちたいです」。優しい口調で丁寧に話す取材対応も印象的な地元出身のキレキレ系アタッカーは、連覇を目指す前回王者の重要なキーマンだ。 MF柳真生(鹿児島城西高3年) 左サイドバック、ボランチ、トップ下と複数ポジションでプレー可能なポリバレントプレーヤー。プレミアリーグでも20試合に出場し、さまざまな役割を担ってきた中で、自身のプレーの幅も着実に広げてきた。「遠征で『1回投げてみろ』みたいになって、そうしたら結構飛んだので、今年の2月か3月ぐらいから投げ始めています」というロングスローも抜群の飛距離を誇り、チームの大きな武器に。身体能力の高さも魅力的だ。もともとは奄美大島出身で「『鹿児島と言えば神村』のイメージしかなくて、話が来てから調べたりして、城西も強いことを知って、ここに来ました。話がなかったら島に残っていたと思います」とのこと。まだまだ底知れないポテンシャルを秘めていることは間違いない。 FW竹花龍生(明秀日立高3年) 昨年度のインターハイではスーパーサブとして優勝を経験。今シーズンは10番とキャプテンを任され、ボランチやトップ下、フォワードなどいくつものポジションで高いクオリティを発揮しながら、「推進力やメンタリティのところは去年より出せているなと思いますし、プレーの幅も広がってきました」と個人の成長にもフォーカスしつつ、チームを逞しく引っ張ってきた。予選決勝で鹿島学園高に競り勝って、全国出場を決めた時には涙を流していたように、最後の選手権には並々ならぬ想いを抱えてきた。「目標は日本一ですけど、先は見過ぎずに、やるべきことをしっかりやっていきたいです」。高校2度目の日本一を成し遂げ、自らカップを掲げるイメージも万端だ。 FW山下景司(大津高3年) 「結果だけで見れば、当初思い描いていた以上に結果が出せていますし、本当にでき過ぎかなと思っています」という言葉は偽りのない本心だろう。プレミアリーグWESTでは20得点を積み重ねて得点王に。東西王者を決めるプレミアファイナルでも2ゴールを叩き込み、日本一獲得の主役を鮮やかにさらう。加えて選手権予選では準々決勝から決勝まで圧巻の3戦連続ハットトリック。今シーズンはとにかくゴールを奪い続けてきた。最後の晴れ舞台で目標に掲げるのは大会記録に並ぶ10得点。「プレミアでも日本一を獲ることができて、歴史を変えることができたので、今まで勝てなかった選手権も勝てるような自信はみんな持っています」。大会ナンバーワンストライカーの躍動から目が離せない。