【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】『異人たち』を観て、声が出なくなるほど本気で大泣きしてしまいました
TV『王様のブランチ』で2001年から映画コメンテーターとして出演するほか、マルチに活躍されているLiLiCoさん。これまでも数々の映画をナビゲートしてきたLiLiCoさんに、「これは絶対に観逃してほしくない!」という“埋もらせ厳禁”な映画について語っていただきます。 【全ての画像】『異人たち』『キラー・ナマケモノ』
これを観ないと、人生大損ですよ
今回は公開が始まったばかりの洋画を2つ紹介します。どちらもほっとくと埋もれてしまいそう!ということで、まず1作目は声が出なくなるほど泣いてしまった『異人たち』。山田太一さん原作で、後に大林宣彦監督が映画化した『異人たちとの夏』をイギリスでリメイクした作品です。 12歳のときに交通事故で両親を失い、それ以降、他人に心を開くことなく生きてきた40歳のアダム。彼はドラマの脚本家として、ロンドンのタワーマンションでひとり暮らしをしています。そんな彼が、両親との思い出を基にした作品に取り組み始めたとき、同じマンションに住む青年ハリーと出会います。めったに心を開くことのないアダムですが、ハリーには特別な感情が芽生えます。 そんな中、執筆のため、アダムは幼少期に暮らしていた郊外の家を訪れますが、そこにはなぜか他界したはずの両親が、亡くなったときの姿のままで暮らしていました。共に過ごせなかった時を埋めるかのように、彼はその家に通いつめるのですが……。 この作品は、観る人によって抱く感情が全く異なるだろうと思います。私にとっては、「2024年のベスト3以内にランクイン確実!」というくらいに泣きました。というのも、アダムと同じく、近しい人を失った経験がある人だったら分かっていただけるはず。アダムは亡き両親との奇跡の再会で、人が変わったかのように心がほぐれていきます。それは、亡くした人に伝えきれなかったことがある人なら共鳴しあえると思うんです。 実は私もスウェーデンに帰ったときに、子どもの頃に住んでいた家に敢えて訪れたことがあります。昔の思い出には、良いことも悪いこともありますが、それを思い出すのは一瞬のこと。むしろ何も感じられなくなったんですよね。それって、もう過去にとらわれず、次の一歩を踏み出すときだ、というサインだと思うんですよ。 アダムもきっとそう。人生における次の一歩を踏み出すためのプロセスとして、両親の幽霊に出会い、心のしこりを解決していくんです。いやー、こんなに自分ごとに考えてしまう作品に出会うとは思わず、本気で大泣きしてしまいました。 オリジナル版(原作と大林監督作)と違うのは国だけでなく、主人公のセクシュアリティもです。ですが、これをゲイの映画だと決めつけるのはナンセンス。たしかに恋愛のパートはありますが、人として人を好きになる、という話ですから、ジェンダーもセクシュアリティも関係ありませんし、むしろ今作の方が主人公の孤独が強調されているんですよ。 なので、オリジナル版をお好きな方はもちろんですが、オリジナル版を知らなかった方にもぜひご覧いただきたいです。これを観ないと、人生大損ですよ。