石丸伸二氏の国政進出、広島県知事選出馬の可能性は? 安芸高田市・“反石丸”の新市長は石丸氏に苦言
「来年の広島県知事選に立つ可能性も」
瞬く間に拡散する動画の特性を熟知しながら、石丸氏はいわば「弱者いじめ」を行ってきたともいえよう。そしてその手法は、今度は一国の宰相へと向けられるかもしれないのだ。 「7日に口にした“広島1区”発言の真意は測りかねますが、あながち冗談だと切って捨てられない状況にあります」 とは、全国紙デスクである。 「裏金問題への対応が尾を引き、自民党には依然、逆風が吹いています。7日の都議補選でも8選挙区で戦い、当選は2議席にとどまるなど劣勢が続いている。実は石丸氏の登場とは関係なく、最近の党内調査で、近く総選挙が行われた場合、岸田首相も小選挙区で落選する恐れがあるというデータが出ているのです」 岸田首相が先月、国会会期中の解散を見送ったのは、こうした報告を受けたためともささやかれているのだ。市議を執拗に攻撃するなど、これまで見られた熱狂的「石丸ファン」の振る舞いからすれば、住民票を一斉に選挙区へと移すことも十分に想定される。いずれにせよ、飛ぶ鳥を落とす勢いの論破王に乗り込まれたら目も当てられまい。もっとも、 「仮に当選しても無所属の一議員では存在感を示すことは難しい。当選ではなく、ただ岸田首相を落としたいがための出馬となるのではないでしょうか。あるいは、大きな裁量を持てる首長を再び目指し、来年の広島県知事選に立つことも考えられます」(同)
「切り抜き動画を見た人から言葉の暴力を受けた市議さんが」
都知事選と同日、石丸氏の辞職に伴う安芸高田市長選が行われ、前市長の手法に批判的な新顔の藤本悦志候補(51)が初当選した。新市長は8日に初登庁し、職員を前に“議会との対話で関係を改善したい”と訓示。また就任会見では、石丸氏が爆発的人気を得るきっかけとなった、ネット上で拡散されている“切り抜き動画”についても対応を検討していく姿勢を示したのだった。 当の藤本市長に聞くと、 「自分の選挙に必死で、都知事選のニュースは見ていませんでしたが、石丸さんが160万票以上も集めたとのこと。対立軸を作って相手をたたくやり方がこれだけ人気というのは、どうなのかと感じます」 そう前置きしながら、 「ああいう手法は、最初は新味があって良いかもしれませんが、ずっと続けば嫌になります。人間関係は格闘ではなく、社会も調和で形成されているのですから、意見が合わない時は話し合って進めないといけません。また切り抜き動画については、今後きちんと調べ、悪質なものは止めていくつもりです。世間ではSNSによって精神的に追い詰められる方もいると聞きます。実際にうちの議会にも、切り抜き動画を見た人から言葉の暴力を受けた市議さんがいるのです」 前任者の今後については、 「石丸さんが広島1区から出るのかは分かりませんが、策略家なのでいろいろ考えているでしょう。結果的に市長職も任期中に放(ほう)ってしまいましたし、都知事選を踏み台にして知名度を上げていったのかもしれません」 前編「『石丸さんは“SNS選挙第一号”』『都市部の男性が支持』 石丸信者の正体とは」では、石丸信者の正体に迫っている。 「週刊新潮」2024年7月18日号 掲載
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