阪神 チャンス生む“チカナカ”の心構えとは? スイングしながら2人で対話 ともに初回の出塁を重要視
逆転連覇へ怒濤(どとう)の巻き返しを見せている阪神。打線を支えているのが、1番・近本光司外野手(29)、2番・中野拓夢内野手(28)のチャンスメーク力だ。球宴後から目立ち始めた1、2番で好機を演出し、中軸でかえす攻撃パターン。勝利に貢献し続ける“チカナカ”の心構えや好調の理由に迫った。 ◇ ◇ 近本が出塁し、中野が送ってクリーンアップがかえす。18日・中日戦の七回にも見られた攻撃パターンが、逆転連覇へチームの勢いを加速させている。現在リーグ得点圏打率は1位・大山、2位・森下、3位・佐藤輝と阪神の中軸が独占。これも近本、中野の出塁があってこそだ。 昨季も多かったこの攻撃パターンが今季、目立ち始めたのは球宴明けからだった。7月26日からの後半戦、チームは7連勝発進。そのうち6試合で近本が出塁し、中野が犠打や安打、四球でつないで得点につなげる形が記録されていた。その中でも初回に得点をしたのが4試合。序盤からチームに流れを呼び寄せていた。 近本は初回に出塁することについて、「いつの時でもそれが1番(打者)の大事な仕事だと思ってるので。むしろそれで出られたら自分の一番の仕事は終わりだと思ってるので」と心構えを明かす。中野も「近本さんが出たらほとんどバントだなっていう考えで打席に入っています。出なかったら自分がなんとか塁に出てチャンスメークしようっていう気持ちで1打席目に入っています」と初回への意識は強い。 9月に入っても2人は変わらずいい働きを見せている。3日から7日の5連勝のうち、“チカナカ”で好機をつくり、得点につなげた試合は3試合。月間で見れば2人が連動した試合(0得点も含む)は8勝2敗と数字に表れている。 球宴後から目立ち始めたこの得点パターンは、まず近本の好調が大きな要因だ。8月の月間打率・390と驚異の数字を残した理由について近本は「(長期ロードで)人工芝の球場が多く、ゴロの打球が抜けやすかった」と明かす。 9月に入り、甲子園に帰ってきてもここまでの月間打率・317と好調を維持。「甲子園だったらどうしてもゴロヒットが抜けなかったり。抜けないから、『じゃあ違うヒット』ってイメージして良くないのもあるから。いろんな考え方を持ちながら今の自分に合うものを選んで打席に入っている」と試行錯誤を重ね、結果につなげている。 逆に中野は8月、月間打率・154と苦しんだ。その中で目立ったのが犠打だった。犠打数は6月が0、7月は6(そのうち5が球宴明け)だったが、8月は13に増加。球宴明けから8月にかけ、低迷していた期間でも、中野が犠打をしっかり決め、つないでいたことが大きかった。 「チームとしてもバントが決まる、決まらないでその後の流れは全然違うかもしれないので、流れを切らないように意識してやってます」と中野。今季両リーグトップの32犠打を決めているが、意外にも練習はフリー打撃の最初の1、2球だけだという。「考えすぎちゃうっていうのがあったので、逆にあんまり練習してないですね。試合になったら気持ちで決める感じ」。あえて練習しないことが成功につながっている。 9月に入ってからは、現在月間打率・291と復調。近本の出塁に続いて安打で好機を広げることも多い。構えをゆったりしていることが奏功しているといい、「脱力した状態で、インパクトのところだけに集中しています。その方がスムーズにバットが出るので」といい感覚をつかんでいる。 試合前、裏で一緒にスイングをしている時に話しているという2人。「内容はちょっと言えないですけど。ピッチャーどう打つとかいろいろ話をしてます」と中野は裏側を少しだけ明かした。残り9試合。チカナカの奮闘が逆転連覇へのカギとなる。(デイリースポーツ・山村菜々子)