多くの人が知らない…あのヤマップに出ている「コース定数」で、持っていく食料と水の量が事前にわかる「画期的な方程式」
コースの体力度を明確にイメージできる
コース定数を使うと、日帰り登山から4泊5日くらいの登山までの体力度を、1から100前後の値で表せます*。 従来のガイドブックでは、初心者向け、一般向け、健脚向けといった大まかな区分で体力度を表してきましたが、それよりもずっと細かい刻みで表せるので、目的とするコースの体力度をより明確にイメージすることができます。 コース定数は現在、山と溪谷社のガイドブックや、ヤマップ社の登山地図アプリなどで採用されています。また、長野県などの山岳県で設定している山のグレーディング表*の体力度の算定にも使われています。 コース定数に、自分の体重と荷物の重さとの合計値を掛ければ、消費エネルギーを算出できるので、食料計画を考える際にも便利です。また、kcalをmlに置きかえれば脱水量も推定できます(ただし真夏のように多量に汗をかくときには当てはまりません)。 *コース定数やグレーディング表については、また別の機会にご説明します。もちろん『登山と身体の科学』では、詳しくご説明しておりますので、ご一読ください。普段、ヤマップアプリを使っている方なら、非常に興味深く思われることでしょう 注意点としては、この方程式を使って求められるエネルギー消費量や脱水量は、無雪期に、整備されて歩きやすい道を、快適な気象条件のもとで歩いた場合の値だということです。登山道が歩きにくい、気象条件が悪いなどの場合には、これらの消費量はさらに増えます。最も登山条件がよい場合の下限値を求める式だと考えて活用してください。 登山計画全体でのエネルギー消費量を把握することで、必要な分量の食糧や水を効率的に選ぶことができます。適切なエネルギーと水分の補充は疲労を防ぎます。また不必要な食糧を持つこともなくなり、荷物を軽くすることができます。 *次回は、暑さや寒さなどの環境の影響で疲労が起こる仕組みや対策についての解説をお届けします。 登山と身体の科学 運動生理学から見た合理的な登山術 安全に楽しく登山をするために、運動生理学の見地から、疲れにくい歩き方、栄養補給の方法、日常でのトレーニング方法、デジタル機器やIT機器の効果的な使い方などをわかりやすく解説。豊富なコラムで、楽しみながら知識が身につけられます!
山本 正嘉(鹿屋体育大学名誉教授)