7000人診察して確信…どんな企業にも絶対いる「他人を見下し、自己保身に走る」人たちの正体
大切なものをすべて失ってしまう前に
似たようなことは職場でも起こる。上司からパワハラを受けた社員が、昇進したとたん、部下や後輩に対して同様のパワハラを繰り返す。あるいは、お局様から陰湿な嫌がらせを受けた女性社員が、今度は女性の新入社員に同様の嫌がらせをする。 こうしたパワハラや嫌がらせの連鎖を目にするたびに、「自分がされて嫌だったのなら、同じことを他人にしなければいいのに」と私は思う。だが、残念ながら、そういう理屈は通用しないようだ。 むしろ、「自分は理不尽な目に遭い、つらい思いをした」という被害者意識が強いほど、自分と同じような体験を他の誰かに味わわせようとする。これは主に二つの理由によると考えられる。まず、「自分もやられたのだから、やってもいい」と正当化する。また、自分がつらい思いをした体験を他の誰かに味わわせることによってしか、その体験を乗り越えられないのかもしれない。 いずれにせよ、職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく。だから、早めに気づいて対処する必要があるのだが、職場を腐らせる人は攻撃的な意図を必ずしも丸出しにするわけではなく、ときには攻撃の気配さえ押し殺して、巧妙に仕掛けてくる。そのため、なかなか気づけない。 いや、それどころか、こちらが「おかしいのは自分のほうではないか」「問題があるのは自分のほうではないか」などと思い込まされてしまう場合さえある。その結果、気がついたときには、大切なものをすべて失っていたという事態になりかねない。 それを防ぐには、まず何よりも目の前のあの人が職場を腐らせる人だと気づくことが必要だ。気づかないでいると、職場を腐らせる人が秘めている悪意によって取り返しがつかなくなるかもしれないので、その正体に読者の方が一刻も早く気づいて、自分の身を守れるようになることを願いつつ、本書『職場を腐らせる人たち』を執筆した。 まず、第1章では、職場を腐らせる人のイメージを読者の方につかんでいただくために、具体例を紹介し、その精神構造と思考回路を分析する。「根性論を持ち込む上司」や「言われたことしかしない若手社員」、「完璧主義で細かすぎる人」や「相手によって態度を変える人」など、15の事例はそれぞれ独立しているので、どこから読み始めてくださっても構わない。 次に第2章では、職場を腐らせる人を変えるのが非常に難しい理由を説明する。なぜそうした人が自己正当化に終始するのか、現在の日本社会に潜む構造的要因についても深く掘り下げる。 最後に第3章では、職場を腐らせる人を変えるのが至難の業だということを踏まえたうえで、どう対処すべきかについて解説する。 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。
片田 珠美(精神科医)