療育が広がり認知上がる発達障害、保護者の抵抗感も減る? 特別支援学級の在籍数7.3倍に、顕著な「自閉症・情緒障害」は21倍 鹿児島県内の公立小中
鹿児島県内の公立小中学校と義務教育学校で、特別支援学級(支援級)に在籍する児童生徒が2024年度、最多の9442人に上ることが2日、県教育委員会への取材で分かった。全児童生徒の7.4%に当たり、発達障害の子どもを加えた「特別支援教育」が本格導入された07年度の1300人に対し7.3倍となった。全国的に増加傾向で、県内はより顕著に表れている。特別支援教育に対する保護者らの理解が進んだことなどが影響しているとみられる。 【写真】鹿児島県内の特別支援学級数と児童生徒数(公立)をグラフで見る
県内の内訳は、小学生が24年度6975人で07年度880人の7.9倍。中学生は24年度2467人で、07年度420人の5.9倍だった。学校基本調査によると、全国の国公私立の小中学校と義務教育学校では23年度37万2795人で、07年度11万3377人の3.3倍となっている。 県内の障害種別の内訳は「自閉症・情緒障害」学級の児童生徒が24年度5200人となり、07年度の248人から21倍と大幅に増えた。「知的障害」学級は24年度4111人(07年度1028人)、「肢体不自由」57人(同17人)、「病弱・身体虚弱」43人(同4人)、「難聴」29人(同3人)、「弱視障害」2人(同0人)。 支援級の児童生徒数増に比例し、学級数も24年度は最多の1994(小学1443、中学551)となった。07年度484(小学318、中学166)の4.1倍に上り、教員の確保が課題となっている。 県教委特別支援教育課は、発達障害などに対する保護者の理解が深まったことや医学の進歩で診断が進んだことに加え、県内の特徴として就学前の療育の広がりを指摘する。
厚生労働省の調べで、0~6歳児1000人当たりの児童発達支援事業所数が19年度、鹿児島県は2.05で、北海道、徳島県に次いで3番目に多かった。全国平均は1.02。同課は「手厚い療育を受け、学校でも引き続き特別な支援や配慮を望むのではないか」と分析した。 ◇「診断を受ける子どもが増え、保護者の抵抗感減った」神戸大学大学院・赤木和重教授(発達心理学) 特別支援学級(支援級)に在籍する子どもたちが急増した理由は、研究が進んでいないが、さまざまな要素が複合的に絡み合っていると推測できる。発達障害の認知度が上がり、検査や診断を受ける子どもが増えた。支援級で教育を受けることに対する保護者の抵抗感も、以前より減っている。学力向上へのプレッシャーや同調主義に押され、結果として通常学級に不適応とされてしまう子もいる。「ちゃんとしなければ」「できるようにならなければ」という意識が、立場の弱い子たちを追い詰めているのではないか。
南日本新聞 | 鹿児島