「こんなんじゃ勝てない」と2日前に戦術変更を決断…果敢に攻めた東北学院、仙台育英を下して37年ぶりの全国へ!!:宮城
[11.3 選手権宮城県予選決勝 東北学院高 2-1 仙台育英高 ユアテックスタジアム仙台] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 第103回全国高校サッカー選手権の宮城県予選は11月3日、宮城県仙台市のユアテックスタジアム仙台にて決勝が行われ、宮城県リーグ1部優勝の東北学院高とインターハイ全国ベスト16の仙台育英高が対戦。2-1で勝利した東北学院が37年ぶり5回目の選手権出場を決めた。 立ち上がりから果敢に攻めたのは東北学院だった。前半1分、この日FWに入ったMF佐藤成真(3年)からパスを受けたMF嶺岸颯人(3年)がフィニッシュに持ち込む。勢い良く試合に入った東北学院に対し、仙台育英はFW河野宗眞(3年)や、この日FWでプレーしたMF黒葛原結天(3年)になかなか良いボールが入らない。 そして先制したのは東北学院だった。前半32分、左サイドをドリブルで駆け上がった嶺岸がクロスを送ると、FW岡元龍太(3年)が右足ワンタッチで合わせてゴールを決める。「岡元は出したら決めてくれるという安心感があったので、引き付けてラストパスを出しました」という嶺岸の狙い通りだった。その後、仙台育英も反撃し、前半終了間際に河野のクロスから黒葛原がシュートを放つが、これが左ポストを叩きゴールならず、前半は1-0と東北学院リードで終えた。 仙台育英は後半頭から3人を交代。両サイドに入ったMF石川真斗(2年)、MF長滝立優(2年)が果敢に仕掛けていくが、それでもなかなか試合の流れを引き戻すことができない。東北学院が1点リードのまま時間が推移していき、迎えた後半33分だった。DF渡邉幸輝(3年)のロングフィードを仙台育英DFが後ろに反らし、GKへバックパスしようとしたところ、このボールを嶺岸がインターセプト。「相手は岡元が前に行っているとわかっていましたが、自分は見られていないと思いました」とうまくボールを奪うと、仙台育英GK小川陽海(2年)をかわして落ちついてゴールを決め、リードを2点差に広げた。 2点ビハインドとなった仙台育英は猛攻を仕掛け、アディショナルタイムの40+4分、混戦の中でボールを奪った石川が右足でシュートを決め、1点差に詰め寄ったが、反撃もここまで。2-1で東北学院が勝利した。 指揮を執ってから初めての選手権出場を決めた東北学院の橋本俊一監督は、過去何度も決勝にチームを進出させながら一度も勝てず、何度も悔しさを味わってきた。3年連続の決勝進出だったが、一昨年は聖和学園、昨年は仙台育英相手に「いつも構えていてラインが下がっていて、うちの良さが出なかった」と相手をリスペクトし過ぎて完敗した。そこで橋本監督は思い切って前に出ることを決断する。「ラインを高くしてコンパクトにしようというゲームプラン通り戦ってくれました」と勇気を持って前に出て、試合を優位に進めた選手たちを称えた。敗れた仙台育英の城福敬監督も「流れがうちに全然来ませんでした。常時向こうのペースでした」と完敗を認めた。 それでも橋本監督は直前まで仙台育英のロングボールを警戒し、自陣でブロックを築いて戦うプランを持っていた。それを変えたのは2日前の紅白戦だった。橋本監督は「『こんなんじゃ勝てない、これだったら絶対、100%勝てない』と木村公則コーチから厳しいことを言われました。そして『やっぱり普段通りやろう』と言ったら、見違えるようになり、選手の目の色が変わりました」と振り返る。木村コーチは昨年度まで仙台育英でコーチを務めていたが、今年度から東北学院のコーチに就任。仙台育英のことを熟知し、勝負にこだわる姿勢を植え付けてきたコーチの進言は大きかった。 キャプテンのDF阿部幹大(3年)は「最後の大きな舞台で相手の対策を考えるだけで足が止まるということが毎年続いていました。木村先生の言葉を聞いたら火が付いて、やってやるぞと思って正直負ける想像がつかないくらい勝ちに貪欲になりました」。攻守で前からアグレッシブに行って、いつも通りのパスサッカーをすることを決断したチームは一丸となり、37年ぶりに全国への扉を開くことに成功した。 そして橋本監督にとって嬉しいのは、息子であるGK橋本脩礼(3年)と一緒に全国の舞台へ行けることだ。「息子共々全国大会に行けてすごく嬉しいですし、その時間を楽しみたいと思います」と自身も選手時代GKだった橋本監督は穏やかな表情で語った。脩礼も「父親が監督での全国大会は気持ちも変わってきます。僕の代で父の目標だった選手権で全国に行くことができて嬉しいです」と語る。 来年の創部100周年に花を添える全国大会出場。チームの目標は全国ベスト8。キャプテンの阿部は「東北学院の名を全国に広めたいです。これまでやってきた球際の強さや、パスサッカーを洗練したものにして、現状に満足せずにレベルアップしたいです」と、全国大会での躍進に向けて強く意気込んだ。 (取材・文 小林健志)