熊本の酪農と食卓支えて70年 らくのうマザーズ 看板商品の牛乳も50周年 生産者減も集荷量は堅調
「らくのうマザーズ」の愛称で知られる熊本県酪農業協同組合連合会(県酪連、熊本市)が今年、設立から70周年を迎えた。看板商品の「らくのう牛乳」も発売から50周年。事業を通じ、西日本一の生乳生産量を誇る熊本の酪農と国民の食卓を支え続けている。 今月13日午前、熊本市東区戸島にある県酪連の熊本工場に、酪農家から集めた生乳を積んだタンクローリーが次々と入ってきた。乳牛の病気を防ぐため、搾乳は毎日する必要がある。このため工場では、一日も休むことなく生乳を集荷している。 集荷した生乳は品質検査を経て貯蔵するタンクに移す。その後は自社の商品向けの原材料に使うほか、県内外の他の乳業メーカーや飲料メーカーに向けて出荷する。 県酪連は1954年、乳業メーカーと直接取引をしていた約2800戸の酪農家が集まって設立した。66年に県指定生乳生産者団体としての認可を受け、県内の酪農家から集めた生乳を、複数の乳業メーカーに販売する「一元集荷多元販売」を始めた。
74年には熊本工場の操業開始に合わせて、らくのう牛乳の製造・販売を始めた。83年に菊池工場(菊池市泗水町)との県内2拠点体制となり、常温での長期保存が可能なロングライフ(LL)製品も発売。85年にはプリンやヨーグルトといったデザート製品の製造もスタートした。2000年には西原村に、牛や動物と触れ合える阿蘇らくのうパーク(現阿蘇ミルク牧場)をオープン。07年には県産牛乳の海外輸出を始めるなど事業の幅を広げてきた。 現在は数十種類の自社製品を製造するほか、他社ブランドの製品を受託生産するOEMも手がけている。大川清治代表理事専務は「酪農家が設立した組織・工場として、生乳を使った高品質な製品をこれからも安定して供給していきたい」と力を込める。 新型コロナウイルス禍での需要減や、資材や輸入飼料の価格高騰、生産者の高齢化など、酪農家を取り巻く環境は厳しさを増している。県内の酪農家の廃業率は23年度に5%を超え、それまでの年2~3%から悪化している状況だ。現在、らくのうマザーズに生乳を出荷する生産者は379戸まで減った。