「一番やってはいけないことが頭にあった」投手が首を振っても貫いた直球のサイン、ソフトバンク海野隆司が見せた成長の証し
◆ソフトバンク3―2西武(18日、みずほペイペイドーム) サインは決して変えなかった。ソフトバンクの海野隆司捕手(26)が先発マスクをかぶって勝利に貢献した。今季はスタメンの機会が増える中、経験を積んでいるからこその判断も見せた。 ■ピンクリボンデーに登場した可愛いダック【写真】 1点を追う中で、8回2死一、二塁のピンチを迎えた。打者外崎修汰にフルカウントとし、マウンドの長谷川威展に送ったサインは「ストレート」。長谷川に数度首を振られても、同じサインを送り続けた。結果は三ゴロで無失点となり、直後に逆転に成功した。長谷川は「海野さんの意図をしっかりと理解し、本当に海野さんのアレ(サイン)を信じて全力で腕を振った」と感謝しつつ振り返った。 海野は「詳しくは言えないですけど」とした上で理由を明かした。「一番やってはいけないことが頭にはあった。その中で一塁も空いていたので、歩かせてもいいくらいの気持ちだったので。その選択でした」 安打を許して追加点となれば致命傷となりかねない。緊迫した場面でも最もベターな選択を判断できたのは海野の成長でもあった。そこは自らも「一番は周りが見えている。展開によってどうしないといけないかを考えられている」と認めるところだ。 昨季は8試合出場。一転、今季は大津亮介やカーター・スチュワート・ジュニアが先発した際など、ここまで9試合でスタメンマスクをかぶっている。「今年はスタメンで出ることが増えているので、試合の見方だったりとかも昨季とは全然違う」。出場機会が成長の源になっていることは明白だった。 打席での結果が振るわなかったこともあって、勝利した試合後らしからぬ表情だった。それでも「勝たないといけないですし、それは間違いなく思っている。どんな展開でもとりあえず勝てばいい」とも言い切る。マスクをかぶって勝利の瞬間にグラウンドに立ち続けた経験は大きい。海野は着実に歩みを進めている。 (鬼塚淳乃介)
西日本新聞社