ヘディングの名手が「先制」も…直後に冷水、チームを救った「代表36試合8ゴール」の破格DF【「奇跡の12ゴール」最強スペインが産声を上げた日】(4)
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、17歳の天才ラミン・ヤマルの1得点4アシストの活躍もあってEUROで優勝したスペインが、苦しみから這い上がり、無敵艦隊へと名乗りを上げるキッカケとなった「奇跡の試合」。本当にあるんですね、そんなことが…。 ■【画像】「冬の女神ですか」「この帽子が似合うの天才」上田綺世の美人モデル妻、ふわふわ白コーデでクリスマスマーケットへ「誘われてないぞ」毎熊晟矢ボヤく
■ようやくの「先制ゴール」も…
ようやくスペインに先制点が生まれたのは15分。右で小さなクリアボールを拾ったマセーダがゴール前に入れると、走り込んだサンティリャーナがヘディングで叩き込んだ。 この日のスペインで唯一30代だったサンティリャーナは、本名をカルロス・アロンソ・ゴンサレスと言ったが、どの名もありきたりだったため、生まれ故郷のサンティリャーナ・デルマルという町の名前で呼ばれていた。蛇足だが、この町の西南郊外には、旧石器時代の壁画で有名なアルタミラ洞窟がある。 サンティリャーナは1971年にラシン・サンタンデールからレアル・マドリードに移籍し、1988年まで17シーズンプレー、461試合に出場して186得点を記録した。身長は175センチと、けっして大きくはなかったが、ヘディングの名手として知られていた。このときも、彼の卓越したジャンプ力とヘディングの能力がフルに生きた。 勢いづくスペイン。しかし、それに冷水をかけられる。24分、スペインのクリアを拾ったマルタのMFシモン・トルテルが中盤から強引なドリブル。ゴール正面でそのパスを受けたFWマイケル・デジョルジョが右足を振り抜くと、シュートは前に立つスペインDFマセーダの体に当たり、GKブジョの逆をついてワンバウンドしながらゴール右に吸い込まれたのである。
■後半だけで「9得点」が必要に…
しかし、スペインはくじけなかった。失点からわずか2分後の26分、中盤からビクトル・ムニョスが大きく右に振り、走り込んだセニョールが頭で折り返したところを、拾ったサンティリャーナが右足を振り抜いて、ゴール左に送り込む。さらに、その3分後には、左からゴルディーリョが上げたボールを高く跳んだサンティリャーナがヘディング、3-1として前半を終えた。 1失点を喫したことで、スペインには12点、後半だけで9点が必要になった。ハーフタイム、観客席にはあきらめムードが漂い、席を立って帰途につくファンの姿も見られた。試合前には90分間で11-0のスコアが必要だった。それが残り45分になったとき、その時間中に9-0が必要…。巨大に見えた壁はさらに高くなり、スペイン選手たちに重くのしかかった。 後半、生き生きと動き始めたのがFWリンコンだった。後半2分、右サイドでセニョールのスローインを受けると1人をかわして前進し、さらにひとりを抜き去って角度のないところから右足でゴールを破ったのだ。10分後にリンコンはロングボールを追って抜け出し、GKも抜いて無人のゴールに5-1とするゴールを決めた。 マドリード近郊出身のリンコンは、レアル・マドリードの育成組織で育ち、レアルでプロとなったが、ポジションをつかむことができず、ローンで3つのクラブで経験を積んだ後、この試合の2年半前にレアル・ベティスに移籍、そこでスターとなった。スピードに乗った突破を持ち味とする選手だった。
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