今季注目の“チェック柄”の定番、スコットランド生まれの「タータン」として認められる条件とは?
ほどよいカジュアルさと気品漂う「ブラック・ウォッチ」
そんな歴史をもつタータンには、目的や用途などによっていくつかの種類がある。スコットランドの由緒ある氏族(クラン)と、その家族が身に着けることが許されるのが「クラン・タータン」。「ディストリクト・タータン」は地域(地方)に根差した柄。その他にも「ミリタリー・タータン」はスコットランドの軍隊用に使われていたもので、王室が用いるのが「ロイヤル・タータン」。組織や企業が販売促進などに使う「コーポレート・タータン」など、さまざまな種類がある。 日本でも人気が高い「ブラック・ウォッチ」は「ミリタリー・タータン」に属するもので、スコットランドの反乱分子を監視するハイランダーズ連隊で着用されていたタータンだ。緑、黒、青の3色を使った黒っぽい色調と警備の見張り(=ウォッチ)からその連隊は「ブラックウォッチ」と呼ばれ、そのままタータンの名称にもなったという。ジャケットやコートの素材として用いても程よいカジュアルさと気品が漂うのがこの「ブラック・ウォッチ」の強み。表地に使っても裏地に使ってももちろん同じ効果を発揮する。あるいはマフラーなどのアクセサリーやバッグの柄に使ってもいい。 今回紹介するのは、ビームス プラスが製作したジャケット。1960年代のアメリカのスポーツコートをイメージしてデザインされ、トラッドのお手本とも言えるモデルで、「ビームス百名品」にも選ばれているほどの同ショップの自信作だ。ドレスパンツを合わせればビジネスにも使え、カジュアルパンツを合わせても洒落て見える。同じ素材でベストやパンツもリリースされていて、セットアップでも着られる。「ブラックウォッチ」を満喫できるトラッドなジャケットだ。 (参考文献『タータン・チェックの歴史』(河出書房新社)、『タータンチェックの文化史』(白水社)いずれも奥田美紀著)
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一