恋愛に対して冷めているのは私も同じ 映画「花芯」で新境地 村川絵梨
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作家・瀬戸内寂聴(当時:瀬戸内晴美)が、女性の「愛欲」と「性愛」を描いた小説『花芯』。その衝撃作が59年の歳月を経て、ついに映画化が実現した。 主人公・園子を演じるのは、NHKテレビ小説「風のハルカ」ヒロイン役の村川絵梨。終戦後の日本の美しい風景のなか、愛なき結婚と新しく芽生えた恋を自らの「子宮」が命ずるまま生きた女性を透き通るほどに美しい素肌を露わにしてのぞんだ、村川の新境地ともいえる作品だ。
台本を初めて読んだときから、園子に惹かれていた村川は、客観的にではなく、いきなり園子の気持ちに寄り添って読み込んでしまったという。 「園子という女性。私、すごく好きって感じました。園子が発する言葉一つひとつが魅力的で、このセリフを言ってみたい、ってすぐに思いました」 台本を読み終えたあと、さらに深く園子の人生をのぞいてみたくなって原作を読んだ。 「これをたくましいと言うのか、ふしだらと言うのか、人によって見方は違うと思う。私はたくましいと思いました。この時代にこういう女性が描かれていたなんて、主人公も物語も時代の先を行っている感じがしました」 『花芯』が『新潮』に発表された1957年当時は、まだ女性が性愛を人前で語ることは許される風潮にはなかった。小説の中に幾度となく登場する「子宮」という言葉に周囲が過剰反応し、瀬戸内は「子宮作家」と批判され、長い間文壇的沈黙を余儀なくされた。
きっといまを生きる女性たちには共感してもらえるかもしれない
「演じていて、園子の生き方に共感してもらえるとは思っていなかったんですね。ただ嘘にならないように、時代も雰囲気も、着ているものも今とは違うけれど、その時代の空気に自分から染まって、説得力が出るように心がけました」 しかし、演じているときの園子と完成した映画の中の園子は村川にとって違って見えたという。 「撮影中はすごく特殊な人を演じていると思っていたんですが、実際、完成した映画を観るとそうでもないって気が付いて、あぁ園子はこういうことに苦しんでいたんだってはっきり伝わってきて、きっといまを生きる女性たちにも共感してもらえるんじゃないかと思いました」 安藤監督は女性は結婚や家庭に縛られず、もっと自由で強くあるべきだと考えている方。村川自身もその考えには共感していて、撮影中にそんな意見を交わす場面もあったという。その意識は映画の中で、時代を先取りにした女性像として、しっかり園子に投影されていた。