【インタビュー】オリックス・太田椋 1球で仕留めた先に「来年は、全試合に出ることを目標にしていきたい」
我慢を覚えて
オリックス・太田椋
【再び頂点へ 新生・オリックスの挑戦】 右方向へも長打を飛ばし、今季は一時、三番に定着。パンチ力が光り、勝負強さに磨きがかかる男の進化は、攻撃力向上を期すチームに好影響を与えるのは間違いない。慢心なき23歳は、体や技術のみならず、思考力にも磨きをかけて新シーズンへ。入団時から口にし続ける『1球で仕留める』の先へと進む。 取材・構成=鶴田成秀 写真=梅原沙織 晴れ晴れとした表情が“巻き返し”への手応えをにじませる。春季キャンプで故障しながら開幕に間に合わせるも、不振で離脱し、再昇格後に再び故障と苦監督交代で生まれ変わるチームとはいえ、今季に得た経験が消えることはない。レギュラー定着へ確かな一歩を刻んだ6年目のシーズンの手応えは、自らの打撃を語る口ぶりからも伝わること。好結果を呼んだ心の余裕と、打席での意識は、さらなる飛躍を予感させる。パンチ力十分の大型二塁手が定位置奪取となれば、得点力アップに期待大。打席内で“我慢”を覚えた男が、打線の軸を担っていく。 ──来季から岸田護新監督となり、新たなチームとして新シーズンへ。すでにチームの変化を感じているものでしょうか。 太田 岸田監督となり、雰囲気からして昨年の秋のキャンプとは違いました。練習メニューも大きく違いましたし。中嶋(中嶋聡)監督は、自主性を重視していたので、個人練習が多かったですけど、今年の秋は全体練習のボリュームが増して。どっちが良いとかではないんですけど、今年は午前中にケース打撃もありましたから。打つほうでは、進塁打を含めた右打ちとか、エンドランを意識して。走る面でも盗塁や一、三塁からのダブルスチールなど、秋の段階から実戦を想定した意識の徹底もあって。チームとしての意思統一というか、共通認識の大切さをあらためて考えることができました。 ──シーズン最終戦後に中嶋監督が辞任し、わずか3日後に岸田監督が就任。監督交代は、選手としても思うことがあったと思います。 太田 本当に驚きました。中嶋監督の辞任も、そして岸田監督の就任も。正直、どなたが監督になっても驚きましたけど、今年は投手コーチをやられており、野手の僕としては指導を受けることもなかったですから。どんな野球をやっていくのだろうって考えましたし。先ほど言ったケース打撃の練習からも感じることができましたけど、目指す野球は、まだまだこれからだと思いますし、来年の春のキャンプでもまた変わってくるのかな、と。いずれにしても、監督がやりたい野球を理解して、皆が同じ方向を向いていくだけ。秋は、そのための準備段階として、個人のレベルアップを目指しました。 ──投手コーチだった岸田監督から、秋季キャンプでは、どんな指導を? 太田 監督は見ている段階だと思うので。そこまで声を掛けられたりはしなかったですけど。声を掛けられたのは、体の面がほとんど。無理してないか? 大丈夫か? と。バッティング練習も、基本的に外野で見られていて。指導というよりも、その前に僕らを見ているんだなって思っています。 ──そんな新監督に対し、来春のキャンプも含め、レギュラー獲りへアピールが続くと思いますが、軒並みキャリアハイの成績を残した今季も大きなアピールとなっているのでは。 太田 う~ん、今年は、ある程度はやれたのかなとは思っていますけど。納得はいってないけど、だからと言って全然ダメだったわけでもない。数字的には、プロに入ってから一番いい数字を残せましたけど、開幕1カ月でファームに落ちましたし、7月にもケガ(右踵骨の骨挫傷)で離脱して。結果としても規定打席にも届かなかったので、“まだまだ”“もっともっと”やらないといけない、という思いのほうが強いんです。 ──ただ、一時は打率3割をキープするなど、手応えも得た1年だったと思います。打席内容も変化が見て取れました。 太田 打席の中でのアプローチの仕方を変えた感じはありましたからね。なんて言うんですかね、ボールの待ち方というか。ある程度、そこは意識しましたし、良くなってきたかな、と思っているんです。 ──打席でのアプローチは意識的に変えたのでしょうか。 太田 変えたというか、冷静になれるようになったというか。ムキにならなくったんですよね(笑)。 ──打ちたいという思いを抑えた、ということですか。 太田 そうです。ピッチャーの“ディスボール”を打とうとしなくなったんです。昨年までは・・・
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週刊ベースボール