『ドラゴンズドグマ 2』開発陣インタビュー「お使い的な掲示板クエストは廃止して、リソースを密度のあるクエストに回しています」
文・取材:ぽんきち プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC向けに2024年3月22日に発売が予定されているカプコンの『ドラゴンズドグマ 2』。 【記事の画像(9枚)】を見る 広大なハイ・ファンタジーの世界で、自分だけの自由な冒険を心ゆくまで楽しめる、オープンワールドアクションゲームだ。2012年発売の第1作から2013年発売の拡張版『ドラゴンズドグマ:ダークアリズン』、2015年登場のオンラインプレイ専用『ドラゴンズドグマ オンライン』を経て、待望のナンバリングシリーズ最新作となる。 本稿ではメディア体験会での試遊後、『ドラゴンズドグマ 2』のプロデューサーであるディレクターの伊津野英昭氏と平林良章氏にインタビューを実施。発売日を目前に控えた現在の心境や、メディア向け体験会でのプレイで沸いてきた疑問点を中心に回答してもらった。 メディア体験会での試遊リポートは以下の記事で掲載しているので、まずはこちらをチェックしてほしい。 プレイヤーの数だけ変化していくクエスト体験 ――いよいよ発売日が近付いてきました。今の心境をお願いいたします。 伊津野 現状、ゲームが発売されるということを現実として受け止め切れていないというか。本作の制作に入ってから、もう4年以上が経過していますからね。 開発チームのメンバーは「もう終わった」という雰囲気が出てきているのですが、僕のほうはまだまだなんですよ。こういった取材やパブリシティの面で忙しい時期が続いていますし、なかなか実感がない状況ですね。 平林 10年ぶりに、改めて『ドラゴンズドグマ』をもう少しでお届けできるということで、ワクワクはしつつも、ユーザーにどのように感じてもらえるのかなと、ドキドキもある感じですね。 社内でもいろいろな人にプレイしてもらっていて、『ドラゴンズドグマ』らしさを継承したしっかりとしたゲーム体験を提供できるであろう手応えは感じております。ぜひ期待していていただければと。 ――濃いゲームファンの反応は気になるところですね。話は変わりますが、本作ではヴェルムントとバタル、ふたつの国が中心となりますが、ゲーム中でほかの国は出てくるのでしょうか。 伊津野 ストーリーの展開も、舞台となるのもヴェルムントとバタルになります。そこに複数の種族が絡んできて……といった形ですね。 前作では、国=集落(街)というイメージでしたが、本作ではそこをひと回り拡大しているので、それぞれの集落や街で他国のような異文化的なものは感じられると思います。 ――試遊では、街中を歩いているだけでも人々に話しかけられ、つぎつぎとクエストが発生していました。いわゆるサブクエストの類いはどのくらいの数になるのでしょうか。 平林 具体的な数はお話しできませんが、ユーザーそれぞれで一定以上のバリエーションを感じていただけるに足る量はご用意できたかなと思います。 伊津野 本作では、ウサギの皮を何枚取ってきてくれ、といった簡単な依頼の“掲示板クエスト”を廃止していて、その分をすべて密度のあるクエストに回しています。その数だけで言うと前作を遥かに凌駕する規模になっています。 平林 掲示板クエストは、数はあれど単なるお使い的なものばかりだったので、それらをすべて中身のある、ゲーム体験として楽しめるクエストのほうに寄せています。 ――『ドラゴンズドグマ 2』のクエストは、単にクエストを消化する、みたいな体験ではなく、「この人が困っているから助けよう」といったように、とても臨場感のある形で楽しめました。 伊津野 とてもうれしい感想ですね。人々から話しかけられて、多くのクエストが発生したときに、「こいつの言っていることはどうでもいいや」と感じたら、それは思い切ってスルーしてもらっても全然構わないんですよ。 クエストをやるかやらないかはプレイヤーの自由ですから、好みのものだけやればいいやくらいの気持ちでプレイしていただけると、より世界に入り込みやすく、気分よく遊べるんじゃないかなと。 平林 我々としては「クエストと義務的に向き合ってほしくない」という思いがありますね。 伊津野 皆さんが作業感を感じないようにと掲示板クエストをやめたので、「依頼人の中でもこの人の言うことは聞いてあげたい」、「この人の好感度を上げたい」というように、プレイヤー側が自分で選択していけるように意識して作っています。 平林 その人に合ったストーリーテリングを感じられるように、自由に旅をしていただきたいですね。せっかくソフトを買ったのだから隅から隅まで楽しまなくちゃ損だ……なんてことはぜんぜんなくて、どうぞ自由に選んでいってくださいと。 伊津野 もちろん全部やってもらってもいいんです。ただ、それだとどうしてもしんどくなるところが出てくるかなと。 平林 そのへんは現実世界と同じかなと。お願いごとを聞けることもあれば、断らざるをえないこともある。あなたが実際にファンタジー世界にいったらあなた自身としてどういう行動を取るか、というところですよね。 ――すべてをこなす正義感に溢れた覚者でもいいし、無理せずできる範囲でやっていく緩い覚者でもいいと。 伊津野 本当に、無理せずできる範囲でやってもらうのがいちばんいいと思います。 平林 がんばれば、全クエストを達成することもできるんですよね? 伊津野 できるはずです。もちろん、めちゃくちゃたいへんですが(笑)。 ――いろいろなクエストがありそうで楽しみです。今回の試遊では狼にさらわれた少年を助けるクエストをプレイしたのですが、人々にしっかりと話を聞いてヒントを得る、フィールドを探索するなど、クエストひとつとってもかなりのボリュームがありました。 伊津野 そのクエスト自体はゲーム中でもシンプルな作りのものですね。過程でいろいろなことが起こるような形にしています。人によっては途中で2回くらいボス戦を挟むこともあるでしょうし。 ――ボスと戦いました! 夜にワイトがいてかなり苦戦するハメに……(笑)。 伊津野 昼と夜でも難度的な変化があります。行きが昼で帰りが夜でも違うし、逆も然り。仕組み自体はシンプルですが、遊びの幅が大きい作りになっています。 ――もっとギミックに凝ったクエストなどもあるのでしょうか。 平林 ないわけではないですが、多くはありません。というのは、手順を複雑に、かつ明確にすればするほど、どうしても“やらされ感”が強くなってしまうからです。本作では、それぞれのプレイヤーがいろいろな選択肢の中で自由に攻略できるように心掛けていますので。 伊津野 いわゆる“因果”ですね。クエストのほとんどは、因果で差が出るように作っています。ですから、途中の過程は基本システムの中でいろいろなことが起こるようにしています。制作中はできるかな……と少し心配でしたが、ちゃんとできました。 同じクエストでも、各プレイヤーに考えながらプレイしてほしいなと。今すぐ出発するのか、朝まで休んでから行くのか……それだけでも変化しますから、まさに十人十色だと言えると思います。 ――クエストひとつを作るだけでも、相当な労力が必要だったのでは? 平林 たいへんでしたね。決め打ちのクエストを数多く作るほうが楽だと思います。 伊津野 (クエスト制作を)その方向でいこうと開発初期に思い付きで言ってしまったせいで、ものすごく苦労することになりました(苦笑)。実際問題、もっとも手がかかっているのはそこなので。 ――覚者の役割を演じるという、本来の意味での“RPG”だなと感じました。 伊津野 前作もそうだったのですが、「自分たちのルールを踏まえてRPGをゼロから立て直したい」という考えがまずありました。ですから、そういった感想をいただけるのはとてもうれしいです。 ――たとえばなのですが、先ほどの狼と少年のクエストでは、少年を救えなかった場合にペナルティなど何らかの影響があったりはするのでしょうか。 伊津野 そもそも、本作ではクエストのメイン・サブを明確には設定していないんですよ。もちろん特定のクエストの発生に必要なクエストなどはありますが、基本的には成功や失敗の区別もしていません。 ――仮に少年を救えなくても、あの少年は運がなかったから……みたいな? 伊津野 そうなります。その結果、依頼自体の達成はできなかったけど、協力に感謝するということで依頼主から御礼の報酬をもらえたりとか。 平林 実際にはそれを失敗だと感じられる方もいるかもしれませんが、ゲーム中で失敗と評価されるものにはなっていません。あくまでプレイヤーが取った選択のひとつになるということです。 ――展開によっては途中でストーリーが分岐するようなクエストもありますか? 伊津野 そういうものもあります。そこが売りのクエストも用意させていただいていますよ。 平林 基本的に因果ははっきりしていますが、過程はプレイヤー次第ですね。本作はアクションゲームですので、アクションとストーリーの体験を分けたいんですよ。いわゆるストーリードリブン型のゲームだとストーリーの分岐などがないと因果関係が膨らみにくいですが、そうするとアクションの部分がオミットされやすい。ですから、我々はそこを逆転させた形にしています。 ――なるほど。ゲーム中はポーンどうしの会話も豊富でおもしろいですね。サポートポーンから、以前出会った覚者は女性ばかりパーティーに入れていた、みたいな話が飛び出たり。 伊津野 やはり長い旅をするゲームですから、道中で何気ない会話がないと寂しいし間が持たない。そこは必要不可欠だよねという話になり、開発メンバーでサンプルを取ったりもしました。あなたはポーンA役、あなたは覚者役、といったように役割を決めて、何人かで大阪城まで行ってきてくれと。それで、間を持たせるためにどんな会話をしたのか報告してもらったりしました。 平林 本当によくしゃべるポーンが多いですからね。 伊津野 そのへんは苦労したポイントでもあるので、楽しんでいただけたら作り込んだ甲斐がありますよ。 自由に、自分だけの唯一無二の冒険が楽しめる『ドラゴンズドグマ 2』 ――フィールドを歩いていると、坑道やモンスターの巣などダンジョン的なものを発見できましたが、種類によって規模なども異なるのでしょうか。 伊津野 バリエーションは豊富に用意させていただいています。入った結果、小さかったり大きかったり。じつはこんな場所につながっていたのかと驚くような位置に設けてあったりとか。目的なく歩いていても、何か発見があるようにしています。 ――探索の楽しみがすごそうですね。ふたつの国を歩いて思ったのですが、ヴェルムントとバタルでは出現するモンスターの種類や、ダンジョン構成の傾向などに違いはありますか? 伊津野 国境を超えると一気に空気が変わったかのような感覚を味わってもらえると思います。どうすれば地域による大きな変化を出せるのかという部分は、開発メンバーもこだわって作りましたので、ぜひ期待していてほしいです。 平林 ダンジョンしかり、モンスターしかり、かなりこだわりを持って作っております。ちょっとした植物などのオブジェクトに至るまで丁寧に作り込んでいますよ。 ――ジョブを自由に変更してパーティーを組めるのが本作の特徴ですが、開発スタッフおすすめの組み合わせなどはありますか? 伊津野 自分がいまハマっているのは、ポーンを全員ソーサラーにして、覚者はアリズンにしたパーティーですね。覚者にメイジ用の武器を持たせておけば回復もできます。ボス戦では圧倒的な火力を感じられる組み合わせですが、その代わりにとんでもなく打たれ弱いのが欠点です。 平林 あくまでも、伊津野が現在楽しんでいる組み合わせですので、そこは勘違いなさらないでください(笑)。 伊津野 さすがにおすすめはしないです(笑)。散々『ドラゴンズドグマ 2』をやり込んで、行き付いた先にいる人間のお遊びだと思ってもらえれば。 平林 ただ“バランスよくジョブを選択しないとクリアーできない”というゲームにはしていません。そこは保証いたします。 伊津野 どのジョブを選ぶにしても、ここを押さえておけば十分な能力を発揮できるという行動の基本がありますので、それが見えてくるまでは頑張って各ジョブを使い続けていただくのがいいんじゃないかなと。 たとえばファイターなら攻撃の合間などでガードを行うクセを付けておく、シーフなら危険な場合に回避行動で間合いを離す、アーチャーならエイム行動とオートエイムの使い分け、といった感じですね。ジョブごとの固有行動がとくに大切になるので、そこを意識するだけでもずいぶんと戦闘がスムーズになると思います。 ――本作をプレイする際、ユーザーに重点的に見てほしい部分はどこでしょうか。 伊津野 今回はロールプレイにこだわるほど、おもしろくなるように設計していますので、ひとつひとつの選択肢に悩んで、考えて、プレイしていただきたいです。戦うのか否か、アイテムの納品をどの人物に行うのか、クエストを受注するのか止めるのか。プレイヤーが取れる選択は無数にありますので、こだわるほどに冒険が楽しくなると思います。 ――貴重なお話の数々、ありがとうございました。発売を心待ちにしているユーザーへメッセージをお願いいたします。 平林 自分だけの冒険が、王道ファンタジーの世界でできるゲームです。それを期待している方は、ぜひ手に取っていただければ、必ずその期待に答える楽しさを提供できると思います。 伊津野 ユーザー全員が違う体験になると言っている以上、「あの人がした体験を、僕はできなかった!」ということも、たくさんあるゲーム。ですから、同じ体験ができるまで試してもらってもいいし、単純にそういった体験談を聞いて驚いてもほしいですね。逆に、「自分はこんなに凄い体験をしたぞ」と自慢してもいい。自由に気ままに、覚者としての冒険を楽しんでください。
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