【ライブレポート】Co shu Nie東阪ワンマンツアー『Wage of Guilt』が大盛況
■「みんな全員ハグしたいぐらい、愛が溢れて…もう、みんなここに閉じ込めます!Zeppに住んでください!」(中村未来) 【画像】Zepp DiverCity(TOKYO)公演の様子(ライブ写真全7枚) Co shu Nie(「o」は、ウムラウトありが正式表記)の東阪ワンマンツアー『Album Release Tour 2024 “Wage of Guilt”』が、9月7日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)、9月21日に大阪・Zepp Osaka Baysideにて開催された。 9月4日に配信リリース(CD盤は9月11日発売)された最新アルバム『7 Deadly Guilt』を携えて行われた今回のツアー『Wage of Guilt』。 2023年4月に開催されたBillboard Liveツアー『A coshutic Nie Vol.3 in Billboard Live TOKYO and OSAKA』で「024年秋に新作アルバム発売」とアナウンスしてから約1年半の間、「no future」「Burn The Fire」「Artificial Vampire」といった新機軸の楽曲を発表する一方で、Co shu Nieは渋谷WWWを舞台に自主企画イベント「Co shu Nie presents “Underground”」を定期的に開催、ライブバンドとしての訴求力と挑戦精神を存分に高めてきた。 そして、今回のアルバムリリースツアー『Wage of Guilt』は、Co shu Nieの創造性と肉体性が圧巻のスケールと強度をもって繰り広げられた、最高のステージとなった。以下、9月7日・東京公演の模様を通してツアーの詳細をレポートする。 この日最初に鳴り響いたのは、最新作『7 Deadly Guilt』からの楽曲「Where I Belong」だった。ヒップホップなどクラブ系の音楽で用いられるリズムパターン“ジャージークラブ”とロックバンドのアンサンブルが組み合わされた結果、4拍子と変拍子が入り混じったような独特の緊迫感を生み出している。 “自分だけの孤独 決して忘れない/どこかには居てもいい場所があるだろうか”。アルバムのなかでもひときわ切迫感に満ちたこの曲が、この日を待ち侘びたオーディエンスを高揚させる。Co shu Nieの音楽ならではの、スリリングで真摯なコミュニケーションが、開宴早々からZeppを熱く沸き立たせていった。 中村未来(Vo、Gu、Key、Programming)&松本駿介(Ba)のふたりに加え、サポートメンバーとしてbeja(Piano、Gu)、堀越一希(Dr)を迎えた4人編成で今回のツアーに臨んだCo shu Nie。サポート陣も含め「Underground」をともに作り上げてきたラインナップということもあり、Co shu Nieの多彩な音楽世界をさらに大胆かつ緻密に躍動させていく。 『7 Deadly Guilt』から立て続けに披露された「Deal With the Monster」のハイブリッドなビート感に艶やかな息遣いを与える松本&堀越のリズム隊も、曲ごとにギター/ピアノを使い分けながら変幻自在な音像を展開する中村&bejaも、バンド全体が音で呼吸し合い共鳴し合うひとつの生命体の如き存在感を実現していたのが印象的だった。 さらに「絶体絶命」「Lamp」といったアグレッシブなシングル曲から、インディーズ時代の楽曲「アマヤドリ」へと繋いで、フロアの温度を刻一刻と高めていくCo shu Nie。「こしゅあん(『Co shu Nie presents “Underground”』の愛称)からずっとライブで育ってきた温度感を、そのままZeppに持ってこれたなって思うんですけど、どうですか?」と意気揚々と呼びかける中村に応えて、オーディエンスの拍手喝采が広がる。 「ダルい曲やります」と一転、「no future」の“何もしたくない 何も意味ない”のアンニュイなフレーズで、ステージと観客の間を濃密な「共犯感」で満たしてみせる。『7 Deadly Guilt』の楽曲をセットリストの要所要所に織り込んだ今回のツアーはまさに、「自分を愛することが 困難なこの時代に、ひとりひとりが正しく自分を愛する」というアルバムのメッセージを立体的かつ複層的に立ち昇らせる、コンセプチュアルな試みでもあった。 「病は花から」「undress me」といった前作2ndアルバム『Flos Ex Machina』(2022年)の楽曲、「iB」など1stアルバム『PURE』(2019年)の楽曲はもちろん、バンド最初期の1stミニアルバム『イドラ』(2012年)からの「私とペットと電話線」「ビードロ鏡の絵について」まで幅広く盛り込まれたこの日のアクト。 中盤に披露された「Artificial Vampire」の前には、「Co shu Nieの手拍子遊びに付き合ってください!」という中村の軽快な呼びかけから、様々なパターンのクラップで会場丸ごとコール&レスポンスに巻き込むひと幕も。そのまま流れ込んだ「Artificial Vampire」のエレクトロポップ調のサウンドと相俟って、Zeppは心地好い祝祭感に包まれていく。 「水槽のフール」から「I want it all」へかけてのグラマラスなポップ感。「I am a doll」をアカペラで響かせた中村の妖艶な歌声。ミラーボールのきらめきとメランコリックなピアノバラードが美しく融け合った「give it back」…謎めいた音世界の奥底へと踏み込んで行けば行くほど、その歌に秘められた想いがクリアになっていく、ミステリアスでマジカルな表現空間が、そこには確かに広がっていた。 「改めまして皆さま、こんばんはCo shu Nieです!」と今度は松本が挨拶すると、「しゅんす!」という観客の掛け声が次々に飛ぶ。「このまま最後までぶっ飛ばしていきたいと思います!」のコールとともに、「asphyxia」からライブはいよいよさらなるクライマックスへと差し掛かっていく。 「bullet」でフロア一面に手を高く突き上げたオーディエンスの高揚感を、「元気あまってる人! これからが本番だよ!」と中村が煽ったところで、「永遠のトルテ」「supercell」のキラーナンバー連射で場内の歓喜と熱量を天井知らずに増幅してみせた。 「アルバムを出しました。完璧主義みたいなところが自分にあったのと…他人と比べたり、『こうでなければ素敵じゃない』って自分に課してきた枷みたいなものを、いったん取っ払って、自分自身を認めたり、愛するっていうことを、どうやったらできるのかな?って。自分の罪悪感(Guilt)と向き合って、完璧じゃない自分も愛せたらなって――難しいけど、そうなれたらいいなって思って、この作品を作りました」 ライブ終盤、中村は『7 Deadly Guilt』に籠めた想いを噛み締めるように語っていた。 「私たちは、理不尽なことに対してグッと堪える癖があるなと思ってるんですよね。もっと怒っていいんじゃないかなって。感情を解放して、そういう自分も受け入れていく、みたいなことをやっていって、楽しく生きていきたいよね? そう思って作りました」 そんな中村の言葉に導かれて轟いた「Burn The Fire」が、Co shu Nie史上屈指のヘヴィなサウンドとエモーショナルな熱唱とともに、Zeppを紅蓮の情熱で染め上げていった。 「今日のために、すごくいっぱい用意をしてきたんですよ。前回のZeppより成長したところを、皆さんにお見せしようと思って。楽しんでいただけたでしょうか?」と語りかける中村に、惜しみない拍手が広がる。 「こうやってね、みんなと音楽を共有することが、私の最大の幸せです。こんな特別な瞬間をたくさん重ねて生きていきたいと、心から思っています。みんな全員ハグしたいぐらい、愛が溢れて…もう、みんなここに閉じ込めます! Zeppに住んでください!って、残り2曲なんですけど(笑)」という中村の言葉とともに、「青春にして已む」の最後の“10年後もその先も君のままで居て”のフレーズで会場一面のハンドウェーブを呼び起こした後、この日の最後を飾ったのは最新アルバムの「消えちゃう前に」だった。 “どんな自分も愛して/理由なんてなくていい”。親和性と神秘性に満ちたCo shu Nieの音楽が、ライブというダイナミックな表現を通じて切実な祈りと願いを編み上げていくような、珠玉の名演だった。 なお、同ツアーの終了直後、ファンの熱い声援に応えて追加公演『Co shu Nie Album Release Tour 2024 “Wage of Guilt” - Encore』の開催が決定。11月28日に東京・渋谷WWW X、11月30日に石川・金沢REDSUNにて開催される。 TEXT BY 高橋智樹 PHOTO BY 鳥居洋介 <セットリスト> 01.Where I Belong 02.Deal With the Monster 03.絶体絶命 04.Lam 05.アマヤドリ 06.no future 07.私とペットと電話線 08.病は花から 09.undress me 10.Artificial Vampire 11.水槽のフール 12.I want it all 13.I am a doll 14.iB 15.ビードロ鏡の絵について 16.give it back 17.asphyxia 18.bullet 19.永遠のトルテ 20.supercell 21.Burn The Fire 22.青春にして已む 23.消えちゃう前に
THE FIRST TIMES編集部