「こみ上げるものが多くて消化しきれない」女優・南沢奈央が語る益田ミリの漫画『ツユクサナツコの一生』
やがて、ドーナツ屋でバイトをしながら漫画をコツコツ描き続けていたナツコのもとに、東京の出版社からウェブ連載の話がくる。この生活がいつまで続くのだろう、という終わりの見えないコロナとの闘いのなかでの明るい兆し。 と思ったら、終盤の思いがけない展開。わたしは一旦本を閉じて、窓から外を見た。ナツコが漫画に綴った言葉が蘇る。 〈理由もわからないまま ある日突然 日常を奪われ ついさっきまで誰かと笑い合っていた時間までもが 消えてなくなったら? まるで 朝咲いて 昼にはしぼんでしまう ツユクサみたいに〉 タイトルの意味を知る。ツユクサナツコの一生。積読中にも表紙の『一生』という言葉からメッセージ性を感じたのを思い出す。 読了後、こみ上げるものが多くて消化しきれないまま。カフェラテの氷は溶けていく一方だし、さっきは暑いくらいに晴れていたのに曇り空になっている。 どうしたって時は流れていく。でも通り過ぎていく日常の一コマ一コマが愛おしいものになればいいな。