広島を変える黒田の動く教材としての力
そして、もうひとつ黒田が広島を変える可能性が“動く教材”としてのチームへの波及効果だ。ヤンキース時代には、チームは田中将大がメジャーの野球に一日でも早くアジャストするため黒田とコンビを組んでもらったが、わからないことすべてを親切丁寧に伝術。マー君のメジャーデビューを陰から手助けした。 この日は、大瀬良大地(24)、野村祐輔(26)と並んでブルペンに入ったが、大瀬良も、「少ししか見られなかったですが、雰囲気が違いました。機会があれば、1年間通して投げられる術を聞いてみたいです」と、報道陣や評論家の人数が違ったこともあって、緊張した顔をしていた。 エース、前田健太(27)も、黒田との8年ぶりの再会を心待ちにしていた一人。刺激を受けたかのようにこの日、ブルペンで、スライダー、チェンジアップ、ツーシームなど、全球種をミックスさせて30球を投げた。黒田とは、ルーキーイヤーの1年間は重なっているが、「昔は、話を聞いても(自分が未熟で)わからないことがあった」という。「オーラがありますね。今なら黒田さんの話もわかると思うので、色々と聞かせてもらい、見て学んで、どんどんいいものを取り入れていきたい」。 日米の野球を知る生きる伝説のような人が、目の前に来たことが選手の向上心に火をつけたのだ。 ツーシームなどの変化球や、シーズンを通してのコンディショニング、故障をしない肉体つくり、強化すべきポイント、コントロールの身につけ方など、“動く教材”の黒田に学ぶことは山ほどある。 緒方監督も「黒田は声をかけるように努力をしていたね。投手陣には、黒田から話を聞いて教えてもらうだけでなく、調整や練習法などを見て盗んでほしい」と、黒田の“兼任コーチ”のような役割に期待を寄せている。 2003年に阪神がリーグ優勝した際、メジャーから凱旋帰国した故・伊良部秀輝氏が、ロッカー内で、メジャーの知識を若手投手にあれこれと教え、投手陣が活性化したことがあった。それが優勝に結びついたわけだが、初日にしてチームに刺激を与えた黒田効果は、確かに広島を変える予感がする。