護身術を指導、男に手をつかまれた女子児童が腕にかみつき脚を蹴飛ばして逃げる「命が一つ助かった」
佐賀県警が委嘱する「防犯アドバイザー」を2007年から務める同県みやき町の平尾昌晃さん(64)は、ボランティアでの防犯活動を熱心に続けている。不審者対応訓練や護身術の指導を通じて伝えるのは、かけがえのない命を守ることの大切さだ。活動にかける思いを聞いた。(緒方慎二郎) 【写真】女性警察官らに護身術を指導する総合格闘家・浜崎朱加さん
――防犯アドバイザーとして、どのような活動をしているのか。 「小中学校や幼稚園、病院や福祉施設などで防犯講習会を開いている。鳥栖市や三養基郡3町を中心に、年間30回ほど。防犯アドバイザーとして活動を共にしている鳥丸鶴一さん(44)とコンビを組み、暴漢に襲われた際に身を守るための護身術や、学校や施設に不審者が侵入した場合にどう対応するべきかを指導している」
――活動を始めた経緯を教えてほしい。 「1999年頃、子どもが通っていた中学校でPTAの役員を務めていた時期に、中学生が不良に絡まれて脅されたり、突き飛ばされたりする問題が起きたのがきっかけだった。武道の心得があったので、空手や合気道の技を取り入れた護身術を考案して、つかまれた手をふりほどく方法などを生徒たちに教えた。2001年に大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件があってからは、学校での不審者への対応訓練にも取り組んだ。そんな活動が口コミで広がり、指導の依頼が舞い込むようになった」
――講習の際に心がけていることは。 「子どもからお年寄りまで、指導する相手は幅広い。同じ学校を訪問しても、話を聞く子どもたちの様子が昨年と今年で全く違うこともある。そのため、相手の年齢層だけでなく、その場の雰囲気も見極めながら、時にはギャグを交えるなどして、できるだけ分かりやすく教えるようにしている」
――どんな時にやりがいを感じるか。 「教えたことが役に立った時の喜びが、活動を続ける原動力になっている。以前、護身術を指導したばかりの小学1年の女子児童が男に手をつかまれる事案があり、その子は教わったとおりに相手の腕にかみつき、脚を蹴飛ばして無事に逃げたという報告を受けた。防犯指導の成果は目に見えやすくはないが、そんな事例を知った時には『よくやったな。お前の指導で命が一つ助かったじゃないか』と自分を褒めている」