65歳の病院長なのに激務…拘束38時間、当直明け26人診察 地方の深刻な人手不足 医師数〝最多〟の県で、なぜ?
「東京に行けるとなったら、大体の人が徳島に残らないと思う。奨学金など目先のことでなく、地元の魅力が増さない限り、地方に人は集まらないのでは」 ▽県内に残った医師は徳島市に集中 課題は県外流出だけではない。高齢化もある。徳島県の医師の平均年齢は54・2歳。全国で最も高い。さらに、県内の医師の多くが県庁所在地である徳島市に集中しているという偏在の問題が大きい。 徳島大は学外に医師を派遣する病院を持っており、医師を偏在なく配置する重要な機能を担っている。地域の需要と医師のキャリア形成をマッチングしながら配置できるという利点がある。 しかし、近年は医師が都市圏の人気のある病院に就職し、異動せず固定化する傾向が強い。 徳島大医学部の赤池雅史教授(医療教育学)は「医師に限らず、若い時は都会に行きたいのでしょう」と述べた上で、医師の偏在の理由をこう見る。 「地方では若手医師の勤務先として大学病院がかなりのウェイトを占めていますが、経営に余裕がないので、若い人に十分な給料を出せていない。地方で良い仕事をしても正当な対価を得られていない違和感が、若い人たちには強いのではないでしょうか」
徳島県の対策については、経済的支援は大きいと指摘する一方、制度で「9年間縛りつける」リスクに懸念を示した。 「30代半ばから50歳くらいまでが医師として臨床での第一線なので、9年後に県外に出してしまったら『せっかく大事に育てたのに何をやっているのか』という話になる」 徳島大の西岡安彦医学部長はこう語っている。 「母校のメリットは長い医師人生の中ですごく大きいものがある。出身大学が同じであれば、何歳になっても仲間。キャリアを長いスパンで考えてもらい、出身大学のある地域に残る選択肢を考えてもらえたらありがたい」