65歳の病院長なのに激務…拘束38時間、当直明け26人診察 地方の深刻な人手不足 医師数〝最多〟の県で、なぜ?
院長の悩みは尽きない。 「無理になんとか保っているが、地域医療として今の体制でいいのか」 念頭にあるのは今年1月の能登半島地震だ。徳島県は、南海トラフ巨大地震のリスクがある。災害医療の経験を積むため、能登にDMATを派遣したいが「通常業務だけで本当に手いっぱい。派遣する余裕がない」 ▽「東京に行けるなら…徳島には残らない」 美波病院の状況を見ていると信じられないが、厚生労働省によると、徳島県は人口10万人当たり医師数が首位だ。しかも最新の結果である2022年末だけでなく、2016年末から首位を維持している。 医師の輩出を担ってきたのが、本田院長の母校でもある国立徳島大医学部。1943年2月に県立徳島医学専門学校として誕生した。戦後の新制大学制度への移行に伴い、1949年に徳島大医学部となった。「旧7帝大」などには及ばないものの、意外と古くからある。 それでも医師が不足する原因の一つは、県外流出だ。
学生が医師の国家試験に合格すると2年間の初期研修があるが、その時点で県外に出てしまう。2024年度は初期研修で県内に残る医師が卒業生全体の3割しかいなかった。 理由として、県外出身者が多いことが考えられる。2023年度に徳島大医学部に進学した112人中、県外出身者が78人を占めた。例年、初期研修で徳島に残るのは県外出身者の1割、県内出身者でも7割となっている。 危機感を抱く徳島県は、医師確保対策として2024年度当初予算案に1億6千万円を計上している。具体的には①徳島大学医学部への入学者のうち、修学資金を貸与する代わりに、県内に9年間勤務してもらう枠組みを12人から17人に増やす②県外の大学へ進学した徳島出身の学生は奨学金で経済的に支援し、県内に9年間勤務してもらう③徳島大学へ入学した県外出身学生のうち、県内で研修した場合に一時金を支援する―。 それでも、学生側の受け止めはいまひとつのようだ。徳島市出身で徳島大医学部3年の男子学生は勤務先をまだ決めていないという。