大荒れ19分間ロスタイムの舞台裏に何があったのか? J審判委員会が反省総括
後半アディショナルタイムが実に19分近くに達した、過去に前例のない一戦の舞台裏が判明した。 日本サッカー協会(JFA)の審判委員会は17日、東京・文京区のJFAハウス内で「2018第6回JFAレフェリーブリーフィング」を開催。試合映像を介しながら終盤戦のJリーグにおける判定事象を検証したなかで、大荒れの展開となった11月24日の明治安田生命J1リーグ第33節、清水エスパルス対ヴィッセル神戸戦におのずと焦点が集まった。 エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平で14時にキックオフされた一戦は、ヴィッセルが3-2とリードしたまま、第4の審判によって「4分」が表示された後半アディショナルタイムに突入した。 2006年のワールドカップ・ドイツ大会の3位決定戦、ドイツ代表対ポルトガル代表などで主審を務めた経験をもち、いま現在は審判委員会のトップレフェリーグループシニアマネジャーを務める上川徹氏は、表示された「4分」の扱いをブリーフィングの場でこう説明した。 「競技規則的には、4分から4分59秒までアディショナルタイムを取ることができます。ただ、4分になったらできるだけ早い段階で試合を終わらせるのも、ゲームコントロールのひとつだという話は(レフェリーたちに)させてもらっています」 アディショナルタイムが3分台に入ったところで、激しいコンタクトプレーが続いた。2度目となった場面ではエスパルスのMF河井陽介が、ヴィッセルのDF橋本和と空中で激突。頭部を強打した河井はその場に倒れ込むも、柿沼亨主審が試合を中断させたのは約20秒後の93分40秒だった。 「映像を見る限り、22番の選手(橋本)の反則を取るべきだった。ボールに対して遅れた行為だったので」 柿沼主審のジャッジに疑問を呈した上川氏だが、最大の問題はその後に発生する。ピッチ上で治療を受けた河井は最終的に担架で運ばれ、救急搬送された。その間に要した約4分半の中断時間を、柿沼主審はアディショナルタイムにさらに上乗せする判断を下す。上川氏が続ける。 「アディショナルタイムはあくまでも4分。その間に何か起きたのであればもちろん時計を止めて、(再開後は)最長でも4分59秒で止めなければいけなかったところで、カウントを間違えてしまった」 河井に代わって今シーズン限りでの現役引退を表明していた36歳のベテラン、MF兵働昭弘が投入された直後など、試合を終わらせるタイミングは何度もあった。しかし、柿沼主審の判断ミスに審判団のコミュニケーション不足が追い打ちをかける。 無線で連絡を取り合っていた2人の副審と第4の審判に対して、柿沼主審は河井の治療に要した時間をアディショナルタイムにさらに追加すると告げる。そして、副審の一人から「それは違うのではないか」と疑問を呈されるも柿沼主審から返答がないまま、試合は再開された。再び上川氏が言う。 「無線で話はしているんですけど、確認までは取っていない。(副審が)違うと伝えたのであれば、レスポンスが返ってくるまで伝えるのが審判団のチームワーク。その意味で、ここでは4人が上手く協力できていなかったと考えます」