劇的な変化ではなかった「新NISA」、積立投資の効用はジワリ浸透
投資信託を保有している人に、保有している投資信託の種類を聞くと、「外国株式に投資する投資信託」が前年の60.6%から64.8%に上がった。保有している投資信託の種類に対する回答数が唯一前年比で上がっている。その他の種類は、「国内株式に投資する投資信託」が前年の50.7%が49.0%に、「株式、債券など、いくつかの資産に分散して投資する投資信託」が33.0%から31.1%に、「外国債券に投資する投資信託」が16.9%から14.3%など。外国株式以外の投資対象から、外国株式だけに投資対象が絞られているような現象になっている。今年は、「全世界株式(オール・カントリー)」、または、「S&P500」のインデックスファンドへの資金流入が目立っているが、その傾向は、この調査結果にも表れている。
一方、投資信託の積立投資実施者に、その利用口座を聞いたところ、今年から始まった「新NISA」が47.8%で、「つみたてNISA」が49.6%という回答になった。「つみたてNISA」は前年の56.3%から比率を落としているが、その他の口座も軒並み利用率を落としている。「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は前年の24.1%が21.1%に、「(一般)NISA」は23.6%が17.8%、「企業型DC」が16.0%から13.7%などだ。また、毎月の積立金額を聞いたところ、最も回答が多かったのは「5~10万円」の20.5%で、これは前年の18.2%から比率が高まった。「10万円以上」も前年の10.0%が16.9%に高まっており、毎月5万円以上という比較的大きな金額で積立投資を実行する人が増えている。
このような結果から、新NISAのスタートは、「劇的な変化」を投資信託市場に与えるものではなかったが、それでも「新NISAスタート」の事実は投資や貯蓄の行動に変化を与えた事実はしっかり確認できた。テレビのニュースや情報番組などで、たとえば、MLBの大谷選手がかかわった事件、あるいは、政治資金を巡る問題などのように、連日のように大きなニュースとして「新NISA」が取り上げられたわけではない。むしろ、一般のニュースでは取り上げられる機会は少なく、金融系のニュースサイトや金融や投資系のSNSなど一部で話題になったというのが実体だろう。新NISAの浸透はこれからだ。今年夏には、今年4月に発足した「金融経済教育推進機構」が本格的な活動を開始することになっている。資産形成について様々な切り口で情報発信をすることが計画されており、新NISAについての認知拡大にも積極的に取り組むことになる。それらの結果が、新NISAの利用、あるいは、株式や投資信託の活用につながることが期待される。(イメージ写真提供:123RF)
ウエルスアドバイザー