センバツ甲子園 光、悲願の初校歌 /山口
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第5日の22日、初出場の県勢・光は彦根総合(滋賀)を2―0で降し、初戦を突破した。光が甲子園で勝利したのは、春夏を通じて初めて。悲願の初勝利に、スタンドに詰めかけた生徒や保護者らから大歓声が上がった。次の3回戦は、25日午前9時に予定されている。【福原英信、竹林静、松本美緒】 「相手打線を抑えて、最後は僅差で勝つ」。エースの升田早人(3年)が試合前に思い描いた通りの展開となった。自己最速を更新する143キロを記録、11三振を奪うなど大舞台でも存在感を見せつけ完封勝利。升田は試合後、「直球で押して、良いリズムで投球できた。特別な甲子園の雰囲気で、自分の持っているパフォーマンス以上のことができた」と振り返った。 この試合からレギュラー入りした安本泰央(同)は一回裏、センターへの大飛球を懸命にキャッチ。守備陣は試合を通じて1失策でしのぎ、エースをもり立てた。中盤まで、走者は出すものの得点できない重苦しい展開に。4番・藤井啓輔(同)の父浩二さん(56)は「火がついたら強いチームなので、誰が口火を切るかだ。流れを持ってきてほしい」と祈るように見つめた。 八回表、ついに試合が動いた。2死一、二塁から岡本一颯(いっさ)(3年)が右前適時打を放ち先制。岡本の父卓治さん(55)は目を真っ赤にして「息子が打席に立った姿は直視できなかったが、結果を出せてホッとした。よくやった。チームのためになって良かった」と話した。続く九回にも相手の失策に乗じて追加点を挙げた。 最後の打者を打ち取り、光の歴史に新たな1ページが刻まれると、アルプス席は拍手と歓声に包まれた。安本の母尚子さん(42)は涙を流し「小さい時からの夢がかない、甲子園で勝てて良かった」と喜びを語った。 ◇「懐かしの校歌」 ○…光の一塁側アルプス席では「懐かしの校歌」が流れた。同校は2020年4月に旧光と光丘が統合して新たにスタート。吹奏楽部と市民吹奏楽団により四回表に旧光の校歌が、六回表には光丘の学園歌が披露され、卒業生らが肩を組んで合唱した。八回表には旧光の応援歌「紺青の旗」も流れた。甲子園には多くの卒業生が駆け付けることから、野球部OBを中心に企画。1993、94年夏に甲子園出場を果たした旧光野球部OBの藤本昭宏さん(46)は「懐かしい校歌が聞けるなんて」と感激。吹奏楽部顧問の井ノ上拓郎教諭は「新旧の校歌で地域一体となって応援したい」と話していた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■白球 ◇「絶対に打つ」願い通じ 岡本一颯選手=光3年 好機を迎えた八回に均衡を破る貴重な適時打を放った。5番打者としてチームの中軸を任されているが、それまでの打席は「雰囲気にのまれ力んでしまった」。ベンチから「楽に行け」と声を掛けられて気持ちを切り替え、「絶対に打つ」と心に決めて打席に入った。 変化球をとらえると打球は一、二塁間へ。「抜けてくれ」という願いが通じるかのようにボールはライトに達し、先制点をもたらした。宮秋孝史監督は「追い込まれながら、よくバットを動かして打ってくれた」と振り返る。 力強いスイングが持ち味で、昨秋の中国地区大会でもチームを勢いづける長打を放つなど躍動した。4番の藤井啓輔も「長打を一番打つのは岡本」と太鼓判を押す。 先制点が入った時には鳥肌が立ったという頼れる5番。「自分たちは長打が打てる選手がそろっているとは思わないので、つないで点を取り、守り勝つ野球をしたい。次戦もチャンスで打ちたい」と先を見据えた。 〔山口版〕