前科40犯の男性が漏らした「もう刑務所に入りたくない」 支援した学生たちが「命の恩人」に 待ってくれる人がいる大切さ
京都地方裁判所の公判で、検察官は懲役6月を求刑した。理由として挙げたのは①前の刑期が終わってからわずか3カ月しかたっていない②過去の裁判で飲酒しないと誓ったにもかかわらず、約束を破ってまた事件を起こした―。 一方、弁護側は、男性が罪を繰り返す背景に、出所後の支援の不十分さを挙げた。その上で板倉さんが作成した「更生支援計画書」を提出。サポートチームで地域での生活を支えていくと訴え、罰金刑を求めた。 2週間後の判決は、懲役5月の実刑。裁判官は更生支援計画書を評価したものの、「前科40犯。今回も出所してから短期間での再犯で、規範意識が乏しい」として罰金刑は見合わないと結論づけた。男性は控訴せず、刑が確定した。 ところで、「更生支援計画書」とは容疑者や被告人に必要な福祉的支援などを取りまとめた書面のことだ。弁護人が社会福祉士などに依頼して作成する。 法務省は2018年度から、東京と大阪の拘置所などの刑事施設で、弁護人から提出された被告人らの更生支援計画書を、再犯防止のために活用する取り組みを試験的に始めた。今年4月からは全国に拡大している。
「再犯防止推進施策の試行のひとつとして、期待を込めて見守りたい」。男性の弁護人も京都の拘置所に、京都地裁に提出したものと同じ更生支援計画書を送付した。 その更生支援計画書に板倉さんはつづった。「老後の時間は限られている。本人の気持ちを確認しながら一緒に地域の中で生活していき、すれ違う人と自然にあいさつを交わせる環境を本人、支援者と一緒になって作りたい」 ▽刑務所からのハガキに「命の恩人」 男性を地域に迎え入れて1カ月ちょっとの再犯に、佐々木さんは悔しさを口にした。「これからお互いの関係を掘り下げていくというときに起こってしまった」 他谷さんは「すべてを防ぐことはできなかったかもしれないが、最小限に抑える方法はあったと思う」と話す。 男性の出所予定は8月下旬。4人は今、その時の準備を進めている。アパートについては、悩んだ末にそのまま借り続けることにした。これまでの支援を途切れさせないためだ。この間の家賃は今後、寄付を募ることなども考えている。