トランプ氏の対中政策次第で大阪IRの先行き懸念 中国総領事「観光客期待するな」
5日に投開票が行われた米大統領選。勝利宣言したトランプ氏の対中政策次第で、大阪府市が2030年秋の開業を計画するカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の先行きが懸念される。日本が対中政策で米国と歩調を合わせるなどして中国人客を取り込めない事態になれば、大阪IRの経営に大きな影響を及ぼすことになる。 【表でみる】大阪IRの計画概要 大阪府市は、大阪IRのカジノ来場者のうち外国人を全体の3割程度とし、売上高は約半分が外国人客からと想定している。国別の割合は明らかにしていないが、地理的に近く、新型コロナウイルス禍前は大阪の訪日客の半分を占めた中国人客が有望な利用客とみなされていることは確実だ。 専門家は「対中関税の引き上げなどで日本が米国と歩調を合わせれば、中国側は確実に日本に対し対抗措置をとるだろう」と警鐘を鳴らす。 米メディアなどによると、中国政府は20年に「自国民の生命と財産を守る」ことを目的に渡航を制限するカジノ設置地域の「ブラックリスト」を策定。リストに含まれる地域は定かでなく、中国政府が恣意(しい)的に特定の国・地域のカジノ訪問を抑制する圧力をかけることも可能という。 中国がこの方針を打ち出す背景には、海外カジノを通じた自国民によるマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑が絶えないことがあるが、中国がカジノ運営を容認する特別行政区マカオへの誘客強化も指摘されている。 大阪IRの中国人誘客については、薛剣(せつけん)・駐大阪中国総領事がX(旧ツイッター)に「カジノは中国で厳しく禁止され、海外でやっても処罰の対象になる。中国人観光客の利用に期待すべきでない」と書き込むなど牽制(けんせい)する動きもある。 中国の観光業界関係者は「対中関係が悪化すれば中国政府は観光業界に対し日本を訪れないよう〝促す〟ことは容易で、業界もそれに従うだろう」と懸念している。(黒川信雄)