FIA、WRCラリージャパンでの“ゼロカー遭遇事件”で大会競技長をけん責処分「安全を確認せずにステージを開始した」
愛知県と岐阜県をまたいで開催されている世界ラリー選手権(WEC)最終戦ラリージャパンのDAY3(11月18日)に、ステージ途中に停まっていたゼロカーに競技車両が遭遇するアクシデントが発生した。これを受けてFIAは、ラリージャパンの大会競技長を務める高桑春雄にけん責処分を下した。 【ギャラリー】WRCラリージャパン2023 アクシデントが発生したのは全長20.32kmの額田の森SS で行なわれたDAY3のオープニングステージ。先頭出走のティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデ)がアタック中、8.6km地点の路肩に止まったゼロカーA(セーフティカー)に遭遇した。 ヌービルはこのゼロカーを見て減速し、ゼロカーの状況を確かめてから残りのステージをロードモードで走った。これを受けてステージは赤旗中断となり、ヌービルに続いてSS9をスタートしていたトヨタの勝田貴元/アーロン・ジョンストン組、M-スポーツのオット・タナク/マルティン・ヤルヴェオヤ組、ヒョンデのエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム組もこの影響を受けた。 これを受けてFIAスチュワードは査問を行ない、DAY3で発生したアクシデントは「競技長が安全を確認せずにステージを開始したため、深刻で危険な状況だった」として高桑競技長にけん責処分を下した。また、スチュワードは「さらなる処置が必要と判断された場合には」FIA WRC委員会に付託されるとした。 FIAは18日の声明で、危険な場所に立っていた観客を退避させるためにゼロカーがステージ内で停車していたことが赤旗の原因だったと説明した。 そして日付が代わって19日、FIAはアクシデントに関する報告書を発表。ゼロカーのクルー、ステージ責任者、競技長のコミュニケーションミスと、通信トラブルが合わさり、ゼロカーがステージ内に留まっている状況でSS9をスタートさせてしまったと断定した。 「競技長はスチュワードに対して、トラッキングシステムによるとゼロカーAがステージ上で2度停止したと伝えた」 スチュワードは報告書の中でそう説明した。 「競技長はゼロカーAがメカニカルトラブルを抱えていると推測したという。彼は後に、ゼロカーAのクルーがステージを移動中に見つけた無許可の人物の退避を見守るために停止していたと気づいたと述べた。また彼は、ゼロカーAのクルーが無線ネットワークを通じてこの事実をラリー本部へ報告する機能に制約があったとも述べた」 「競技長の主張によると、彼はステージ責任者からゼロカーAがステージを開始する前にステージから退去したと聞かされていたが、その後の調査で、ゼロカーAが報告した現在地についてステージ責任者に誤解があったことが判明した。彼はステージ責任者の報告から、ゼロカーAが安全な位置に移動し、ステージを開始するための準備が全て整っていると思い込んでいた」 「ゼロカーAのドライバーとコドライバーは競技長の主張を認め、彼らがいた場所には無線電波が届かず、ステージ上に無許可の人物がいることをラリーコントロールに伝えることができず、プレッシャーの中で行動したと述べた」 「彼らはステージ内にいた無許可の人物の安全を心配していたと言う。彼らはステージでマーシャルを見つけ、ステージ責任者へ報告するよう求めた。そのマーシャルはステージ責任者から、ステージから当該人物を退避させる手伝いをするよう要請されたと答えたという。そのため、自分たちがステージから安全な場所へ退避するまでは、ステージは開始されないモノだと思っていた」 「ゼロカーAのドライバーとコドライバーは、イベント前に実施された3回の安全ブリーフィングで、ゼロカーの役割はスタート地点を離れたらステージ内で停車しないこと、そしてその指示に従わなかったために危険な状況が発生したことを認めた」 高桑競技長はゼロカーAのクルーの行動の全責任を負うと認めた。
Tom Howard, 滑川 寛