警戒する「ステルス増税」は消費税〝1・2%分の負担増〟に 日本経済の危機、元凶「再エネ賦課金」即刻廃止すべき
【ニュース裏表 田中秀臣】 マスコミ各社の内閣支持率調査や衆院選の情勢分析などが出始めている。内閣支持率は、政権発足直後にもかかわらず低調な数字が並んでいる。衆院選の情勢も与党には厳しい数字が一部で出ている。まだ有権者の多くが投票先を決めていないため事態は流動的だが、仮に衆院選後も石破茂政権が継続するとして、どのような経済政策が現段階で必要だろうか。 現在の日本経済は安定的な成長のチャンスを逃しつつあるといっていい。その最たる理由は、岸田文雄前政権の慢心と日銀の利上げ路線にあった。 岸田政権は、民間の賃上げと定額減税によって経済は安定すると信じていた。特に賃上げや定額減税で可処分所得を増やして、日本経済が伸び悩む主因といえる消費の低迷を打開することを狙っていた。だが消費は低迷したままだ。最近では、原材料高などでコストの負担が高まっても、それを販売価格に上乗せする企業が急減している。値上げするとお客を失う恐れがあるからだ。これは典型的なデフレ型の企業行動だ。背景には、価格上昇に耐えられない消費者のふところ事情がある。 理由のひとつは、目先の賃上げや定額減税で可処分所得が増えたとしても、その大半が将来の「増税・負担増」を警戒して、消費に回っていないことだ。この「増税・負担増」の代表例がいわゆる「ステルス増税」だ。 江口允崇(まさたか)准教授(駒沢大学)と安田洋祐教授(大阪大学)は、このステルス増税を消費増税に換算した数字を公表している。ステルス増税の中身は「防衛増税」「再エネ賦課金」「森林環境税」「子ども・子育て支援金」だ。いずれもこれから負担増や増税が予定されているものだ。江口・安田試算によれば、ステルス増税は所得が低い人たちほど負担増になり、標準年収世帯だと消費税に換算すると「1・2%」にもなる。防衛増税は特にたばこ税の負担が大きいので、喫煙世帯は消費税換算で最大「4・2%」の負担になる。このようなステルス増税があれば、消費が低迷するのもわかる。 石破首相は、防衛増税の時期を議論すべきだと発言している。これはステルス増税の負担をさらに消費者に意識させるだろう。防衛増税は経済成長による税収増、それで不足すれば国債発行で対応すべきだ。「巨額の補正予算をこれから行う」と石破首相が言っていることは正しい。最低でも20兆円の補正予算が今の日本には必要である。また「再エネ賦課金」は、非効率な再エネ産業を温存し、また投機マネーを生み出す元凶だ。即刻廃止すべきだろう。
さらに日銀の利上げ路線を牽制(けんせい)するために、来年に予定される日銀の審議委員の人事は、反緊縮を主張する新委員を選ぶべきだ。 (上武大学教授 田中秀臣)