「奥にもっと良いのが」規制のロープ乗り越えて手に一杯のワラビ 天然記念物の湿原を踏み荒らす山菜採り相次ぐ
■植物の踏み荒らしや植生への影響懸念
国天然記念物に指定されている霧ケ峰の踊場湿原(長野県諏訪市)や八島ケ原湿原(同諏訪市・下諏訪町)でこの季節、山菜採りが相次ぎ、長野県などは採取者による植物の踏み荒らしや外来種の種子などの持ち込みによる植生への影響を懸念している。両湿原一帯は八ケ岳中信高原国定公園の特別保護地区で植物の採取が規制されており、県などによると、動植物の採取を制限した自然公園法違反の恐れもある。 【写真】八島ケ原湿原で立ち入りを規制するロープ。ロープから数メートル先にわたりワラビが採られていた
踊場湿原の駐車場に車を止めた女性が今月上旬、湿原への立ち入りを規制するロープをまたいで山菜を採っていた。一緒に訪れた女性と「奥にもっと良いのがある」「どう食べようか」と話しながら進み、ワラビやイタドリで手がいっぱいになっていた。
他にもロープ内には人が侵入して踏み荒らしたとみられる地面の露出部分が各所に確認できた。八島ケ原湿原でもワラビなどを採ったとみられる跡が確認された。
■動物の捕獲や直物の採取は制限される
国立公園や国定公園といった自然公園は、景観や自然を保護するために動物の捕獲や植物の採取などの行為が制限されており、特別保護地区では学術研究などの目的以外はできないことになっている。県霧ケ峰自然保護センターによると、採取などによる踏み荒らしが湿原の生態系に影響する恐れがある。
特別保護地区にある動植物や鉱物などを採取するには県への申請が必要で、県自然保護課などによると、今回の女性たちのような食用の山菜採取は学術目的ではないために合理的理由に該当せず、許可されないと考えられる。無許可で採取すると自然公園法違反になる恐れがある。
霧ケ峰では山菜の採取の他に写真撮影などのために山道や遊歩道から草原内に入る人がおり、踊場湿原周辺では踏み荒らされることで草原特有の植物が減っている場所もある。靴に付いた外来植物の種の持ち込みで外来植物が繁殖している場所もあり、県などはウェブサイトや現地の看板で特別保護地区などの採取禁止を呼びかけている。