なぜロシアがNGでイスラエルはOK?『パリオリンピック』の裏側 ロシアは“新オリンピック”の開催を検討!?世界が分断のおそれも【五輪と国際情勢】
今回のパリオリンピック™では、ウクライナへの軍事侵攻を理由にロシア・ベラルーシが“国として”の参加は禁止されました。一方、パレスチナと対立するイスラエルは、通常どおり参加しています。なぜロシアがダメで、イスラエルはOKなのか。そこには、オリンピックの理念や国際情勢など、様々な要因が関係しています。“平和の祭典”の裏側について、オリンピックの歴史などに詳しい環太平洋大学・体育学部の真田久教授への取材などをもとに情報をまとめました。 【画像を見る】1972年の『ミュンヘンオリンピック事件』とは?
【ロシア・ベラルーシ】国として参加NG…ウクライナ侵攻が理由
今回のパリオリンピックで、国を代表しての参加が禁止されたロシアとベラルーシの選手。“中立”の立場を表明した人のみ、“個人資格”での参加が認められていて、その数はロシア15人・ベラルーシ17人(7月20日現在)となっています。ただし、個人として出場する選手は開会式の入場行進が認められず、メダル授与式で自国の国歌・国旗は使用されません。 なぜ今回、ロシアが国としての参加を禁止されたのか。まず、ウクライナ側は「ロシアの選手を参加させるべきではない」という声明を出し、国連も「ロシアはウクライナを侵略している」という認識です。そして、IOC(国際オリンピック委員会)は「ロシアはウクライナのオリンピック委員会を勢力下に置こうとしている」として、スポーツの世界でも侵略が見られることから、今回の処分が決まりました。 そもそも『オリンピック憲章』では、「平和な社会の推進」という理念を掲げていて、平和に反する国は参加できないのが原則です。
【イスラエル】国として参加OK ガザ地区へ侵攻しているが…
一方で、ガザ地区に侵攻している「イスラエル」、イスラエルと対立する「イラン」、アジアの平和を脅かす「北朝鮮」は“国として”参加しています。『オリンピック憲章』には「すべての個人はスポーツをすることへのアクセスが保証されなければならない」という理念もあります。国の政治的事情で参加できないのはおかしい…ということで、「平和な社会の推進」と「スポーツへのアクセスを保証」、ときに対立する2つの理念の両立に、IOCは苦心しているようです。今回のロシア選手の“個人資格”での参加は苦肉の策でした。 ガザ地区に侵攻しているイスラエルについては、パレスチナが「イスラエル選手の排除」を求め、国連は「即時停戦」を求めています。一方、IOCは「両国のオリンピック委員会は平和的に共存している」という見解です。 また、イスラエルが参加を許されたのは、1972年の『ミュンヘンオリンピック事件』に対する同情的感情も世界的にあるのではないか、ということです。事件では、オリンピック開催中、選手村にパレスチナ・ゲリラの武装組織が乗り込み、イスラエルの代表選手ら11人が殺害されました。 ちなみに、北朝鮮は前回の東京オリンピックをコロナ禍を理由に参加表明しませんでした。しかし、実はこれはルール違反で、各国のオリンピック委員会は参加を表明する義務があるということです。この“ルール違反”によって北朝鮮はIOCから制裁を受け、2023年までオリンピックには参加できませんでしたが、今回のパリ大会は制裁が解除され、参加となりました。