地域の文化 高齢化に勝てず…… 郷土の催し 涙のんで幕
最後の農民運動会 笑顔で縄ない 高知
地域の伝統文化として受け継がれてきた催事や祭りが消滅するケースが相次ぐ。運営に携わる住民らの高齢化が背景にある。一方、民間調査によると、若者層からも祭りの存続を望む声が出ており、催事を支える人材をどう確保するかが課題となっている。 本山町の大石地区で40年続く催事で、食や農にまつわる競技に地域住民らが挑む「本山町南部農民運動会」が今秋を最後に、幕を閉じた。地域住民やJA高知県本山支所の職員ら約60人が参加。縄ないやおにぎりなどの早食い競争など、8競技を楽しんだ。 わらで縄を編む早さを競う「全日本縄ない選手権」では、地面に置かれたわらを集め、昔ながらの縄作りに挑戦。慣れない作業ながらも、いち早く完成させようと必死にわらをねじり上げていた。 1984年に始まった運動会は、稲作に関連するユニークな競技を設け、幅広い世代が楽しんできた。しかし、住民の高齢化のため、今年で閉幕が決まった。大会実行委員会の吉永誠人委員長は「先輩方から受け継いできた伝統や歴史を守っていけるよう、新たな活動を検討したい」と話す。
「長く続いて」4割 若者層にも憂う声
全国1100人を対象にした祭りに関する意識調査で、祭りを文化の一つと捉え、長く続いてほしいと望む人が4割を占める結果が出た。最も高かった世代は20、60代の女性。高齢層だけでなく、若者にも地域の祭り存続を望む声が多い。 20~60代の男女を対象に、リサーチ会社のクロス・マーケティングが今年7月に調査した。 祭りの運営や今後について感じることを複数回答で尋ねると、トップは「文化として長く続いてほしい」の38%。性別・年代の内訳を見ると最多は20、60代女性の43%だった。 2位は「伝統的な祭りの継承者がいなくなることが心配」の16%。最多は60代女性の22%だったが、30、40代男性が18%と続き、若年層からも継承者不在を懸念する声が出ていた。 国土交通省の推計によると、都市から地方に定期的に訪れる「関係人口」のうち、まちおこしの企画・運営などに参加する「直接寄与型」は全国で628万人(2020年)に上る。関係人口をどう取り込むかが地域の催事維持の鍵の一つとなりそうだ。
日本農業新聞