【東京スポーツ杯2歳S展望】激戦必至の出世レース 佐々木大輔が史上初の偉業か、史上最速馬が無傷V2か
[GⅡ東京スポーツ杯2歳ステークス=2024年11月16日(土曜)2歳、東京競馬場・芝1800メートル] レース創設から29年目を迎える、出世レースの東京スポーツ杯2歳S。これまでに誕生した28頭の勝ち馬のうち、イクイノックスやコントレイルを筆頭に、半数の14頭がのちのGⅠ馬(障害のGⅠ馬を加えると16頭)へと飛躍した。GⅡに昇格して4年目の今年も、登録馬は9頭とやや寂しく映るが、将来性豊かな若駒が勢ぞろい。来年のクラシック戦線を占う意味でも、目が離せない一戦だ。 9頭中7頭が前走で勝ち上がった顔触れにあって、新馬勝ち→札幌2歳S3着というファイアンクランツ(牡・堀)の実績は際立つ。全体的に幼さが残り、粗削りな面があるのは否めないが、それでいて重賞で好走できるのは能力の高さがあればこそだ。今回は新馬Vを果たした佐々木との再コンビ。その佐々木は今年ここまで函館2歳S(サトノカルナバル)、札幌2歳S(マジックサンズ)、サウジアラビアRC(アルテヴェローチェ)と2歳重賞を3勝している。JRAでグレード制導入後、同一年に2歳重賞を3勝したケースは佐々木を含めて延べ15例あるが、4勝となれば史上初。デビュー3年目でトップジョッキーとしての地位を確立しつつある若手エースが、4頭全て異なる馬での2歳重賞Vという偉業に挑む。 実績で見劣りするとはいえ、新馬戦の勝ちっぷりが目立った馬は少なくない。中でもクロワデュノール(牡・斉藤崇)は、東京芝1800メートルの2歳新馬戦としては歴代最速の1分46秒7というタイムで快勝。それを6月の時点でたたき出したことに絶大な価値がある。ひと息入った今回はまだ上積みの余地を残す印象だが、最終追い切りの動き次第では無傷の重賞Vが見えてくるだろう。 勝ちタイムこそ目立たないが、レッドキングリー(牡・木村)が初陣で見せた瞬発力は数字以上のインパクトがあった。着差がつきにくいスローの流れで、2番手追走から後続を突き放して4馬身差の勝利。必ずしも追い出してからの反応が鋭かったわけではなく、多分に若さを残す内容だった。こちらもクロワデュノール同様、まだ良化途上の感があるが、新種牡馬である父サートゥルナーリアに初の重賞タイトルを贈ることができるか。 デルアヴァー(牡・松永幹)はフランケル産駒の米国産馬だが、母はダートグレードレースで6勝を挙げたアムールブリエ。他にもラニ、アウォーディーなどダート巧者が多い一族だが、この馬は天皇賞・秋を制した祖母ヘヴンリーロマンス譲りの決め手で鮮やかに新馬戦を差し切った。レースぶりを見るかぎり、前走の福島より東京コースの方が合いそうな印象。久々ながら入念な乗り込みを消化しており、当日の気配が注目される。 リーディングサイアー争いを独走するキズナは、2歳世代でも2頭の重賞勝ち馬(マジックサンズ、ブラウンラチェット)を出すなど4頭がオープン入り。世代限定のリーディングでも勝利数、賞金ともに1位と絶好調だ。サトノシャイニング(牡・杉山晴)は9月の中京で好位追走から抜け出す完勝デビュー。勝ちタイム以上にスケールの大きさを感じさせた。調教では2週続けて上々の動きを披露。生産した下河辺牧場と杉山晴調教師にとっては、先週の武蔵野S(エンペラーワケア)に続く2週連続の土曜東京重賞Vがかかる。 このほか、夏の新潟新馬戦を快勝したジーティーマン(牡・小栗)、使いつつ安定感を増してきたプレシャスデイ(牡・伊坂)などが上位進出をうかがう存在。GⅠへの登竜門を制するのは果たしてどの馬か―。
東スポ競馬編集部